概要
Googleスレットインテリジェンスグループ(GTIG)とマンディアントは報告を行いました。企業が保有する大規模言語モデル(LLM)へのアクセスが不正に乗っ取られる「LLMJacking(LLMジャッキング)」についてです。北米やアジア太平洋などの金融、リテール、テクノロジー、交通分野で被害が確認されています。暗号資産の不正採掘とは異なります。短時間で多額のクラウド料金が発生する点が特徴です。
何が発表された?
Googleのセキュリティ専門チームが公表しました。内容は2026年に多発したLLMJackingの実態と攻撃のライフサイクルです。発表によると、北米や南米、アジア太平洋地域の様々な組織がこの侵害を受けています。金融サービスや小売、技術、交通の各セクターで被害が確認されました。組織が気づかないうちに数百万米ドル規模の課金が発生した事例もあるとしています。
攻撃者はどのように侵入しているのか?
攻撃者は企業のフロントエンドにあるチャットボットを迂回します。そして、バックエンドのモデルリソースを直接狙っています。具体的には公開されたままになっているLLMのエンドポイントや、有効なAPIキーを悪用する手口が確認されました。
さらに、公開されているGitHubリポジトリから企業向けのLLM APIキーを収集する動きも見られます。攻撃者は最小限のトークンを使った自動化スクリプトを走らせました。これでエンドポイントの検出やキーの有効性をこっそり確認しています。これにより、企業の監視システムによるアラートを回避しながら悪用を続ける手法が取られています。
認証情報はどのように盗まれるのか?
クラウド環境への最初の足がかりとして、攻撃者は好んで利用するものがあります。それは漏洩したクラウドのアイデンティティトークンやサービスアカウントのキーです。具体的には以下が標的となっています。
- IAM認証情報
- GitHubのパーソナルアクセストークン(PAT)
- アクティブなセッション情報
ある事例では、設定ミスのあるサービスアカウントキーを悪用してクラウドインスタンスが侵害されました。その結果、LLMのAPIへアクセス権が拡張されています。また、フィッシングページを使う手口も確認されました。ユーザーからアクティブなアクセストークンを含むJSONペイロードを直接入力させます。これで多要素認証(MFA)をバイパスする手口です。
権利の昇格と内部での移動はどう行われるのか?
初期の足がかりを得た後、攻撃者は権限を昇格します。目的はアクセスの維持と内部の偵察です。クラウドサービスやコードリポジトリ、データストアをくまなく調べます。これで機密性の高い認証情報を探し出します。
コンテナ化されたクラウド環境に入り込んだ別の事例がありました。ここではセンシティブなコードベースを複製しています。その中からハードコードされた秘密情報や開発者の認証情報を探す動きが観測されました。また、クラウドのストレージやデータベースのメタデータテーブルに対してクエリを実行しています。これで管理者パスワードや追加の認証情報を収集しました。仮想マシンの設定を悪用して不正なIAMアカウントを作成するケースも報告されています。作成したアカウントには管理者の権限が付与されました。
不正利用された資源はどのように現金化されるのか?
LLMJackingの最終的な目的は基盤モデルのリソースを乗っ取ることにあります。そして、それを収益化することです。攻撃者は従量制の契約を勝手に結びました。これにより高額な推流量を発生させています。短期間で10万米ドルを超えるような高額な請求を被害組織に押し付けていました。
また、取得したAPIキーやクレジット枠は「LLM Mixers(LLMミキサー)」と呼ばれる不正な中継業者を通じて再販されていることが判明しています。オープンソースのAPIゲートウェイや中継インフラを利用し、盗んだ認証情報をプールする仕組みです。それを裏社会のストアで安価なアクセスプランとして販売している実態が明らかにされました。
これまでの流れ
Googleが公開した一連の脅威インテリジェンスがあります。そこから攻撃者の手口が鮮明になりました。攻撃者はAIインフラや自動化ツールを組織的に悪用しています。企業のセキュリティをすり抜けて金銭を得ようとする手口です。
まとめ
LLMJackingは企業のAI利用環境における新たな脅威となっています。公開されたエンドポイントの保護が欠かせません。また、APIキーの適切な管理と、権限の最小化を徹底することが求められます。
組織の管理者は直ちに確認を行ってください。自社のクラウド環境で不審なAPIリクエストや予期せぬ料金の急増がないかを確認することが重要です。