ニッセイ基礎研究所の斉藤誠研究員のレポートによると、インドネシア中央統計庁(BPS)が2026年11月5日に公表した7〜9月期の実質GDP(国内で生み出された財とサービスの合計)の速報値は、前年同期比5.47%でした。インドネシアと取引や投資がある人には、景気の今の強さと今後の見通しを読むための基礎になる統計です。日本で暮らす会社員が今すぐ何かを変える必要はありません。
製造業とサービス業が成長を押し上げた
前期は5.29%で、今回の5.47%は加速です。市場予想(Bloomberg調査)の5.20%も上回りました。1〜9月期の累計は前年同期比5.45%で、政府の2026年の成長率目標5.4%を超えています。
産業別に見ると、伸びの中心はサービス業です。サービス業は7.19%で、前期の6.22%から加速しました。宿泊・飲食業は11.22%、金融・保険は8.47%と高い伸びでした。
製造業も加速しました。製造業はGDP全体の約2割を占め、5.87%と前期の4.52%から伸びが上がりました。化学・医薬品と基礎金属が伸びを支えた一方、金属製品・コンピューター・電子・光学・電気機器は2.33%に減速しています。
サービス業と製造業は伸びが加速し、農林水産業は大きく鈍化しました。
| 産業 | 前期 | 今回 | 変化 |
|---|---|---|---|
| サービス業 | 6.22% | 7.19% | 加速 |
| 製造業 | 4.52% | 5.87% | 加速 |
| 農林水産業 | 3.80% | 0.46% | 大幅に鈍化 |
農林水産業は0.46%で、前期の3.80%から大きく鈍化しました。食用作物は前年同期比1.58%減り、園芸作物とプランテーション作物もマイナスに転じています。畜産と漁業は増えましたが、全体を押し上げるには至りませんでした。
日本との取引で見るべき、輸出と投資の数字
家計の消費は5.04%で、前期の5.06%とほぼ横ばいでした。外食・宿泊が6.59%、交通・通信が5.83%と高い伸びでした。食料・飲料は4.15%にとどまっています。
政府の消費は8.95%で、前期の15.97%から減速しました。公務員の給与・手当に加え、MBG(無償給食)の対象拡大による支出が押し上げました。ただし前年の対象拡大の反動から、今後は押し上げ効果が弱まる可能性があるとレポートは見ています。
総固定資本形成(工場や設備、建物などへの投資)は6.06%で、前期の6.87%から鈍化しました。輸送機器は12.96%と2桁増を続けた一方、機械・設備は2.19%にとどまっています。
輸出は4.59%で、前期の4.07%から加速しました。ニッケル関連製品などの非石油・ガス輸出は6.02%増えました。石油・ガス輸出は12.81%減っており、大幅な減少が続いています。
輸入は7.31%増え、輸出を上回りました。その結果、純輸出の成長率への寄与度はマイナス0.28ポイントです。前期のマイナス0.90ポイントから、マイナス幅は縮まりました。
編集部の見方では、投資が伸び続けるかが次の注目点です。
今後は、政府が2027年の予算上の成長率目標を2026年の5.4%から6.0%に引き上げました。目標達成には、投資の伸びを7%に高める必要があるとしています。政府系投資機関ダナンタラを通じた戦略産業への投資を進め、民間投資も促す方針です。
金融面では、インドネシア中銀(BI)が11月から預金準備率を引き下げ、12月にも追加で下げる予定です。預金準備率は、銀行が預金の一部を中央銀行に預ける比率のことです。銀行の貸出を促す狙いがあります。
一方、MSCIは10月、インドネシア株式市場を新興国市場から「単独市場」へ格下げする案を公表しました。最終判断は2027年6月までに下される予定です。格下げになれば、株式市場からの資金流出やルピア安の圧力が強まり、金融緩和の余地が狭まるおそれがあるとレポートは指摘しています。
ADB(アジア開発銀行)は2027年の成長率を5.2%と予測しています。政府が掲げる6%成長の実現には、民間需要のさらなる拡大が欠かせないとレポートは見ています。
