概要
フランスのAI企業Mistral AIが、新しい大きなAI「Mistral Large 4」の試用版を出しました。
文章だけでなく画像も理解できます。特にプログラム作りと、セキュリティの調査が得意だと説明しています。
いちばんうれしいのは、システムを守る人や開発者です。AIの中身にあたるデータ(重み)も月末に公開される予定で、自社のサーバーで動かせる道が開けます。
何が発表された?
Mistral AIは2026年10月6日、「Mistral Large 4」のパブリックプレビューを始めました。愛称は社内で「ML4」、公式には「le Chonk」と呼んでいます。
公式ニュースによると、規模は1兆パラメータです。パラメータとは、AIの賢さを決める調整値の数のことです。実際の処理で使うのは、そのうち520億(アクティブパラメータ)です。
ML4は最初から画像も扱える「ネイティブなマルチモーダル」モデルです。同社の中で最大かつ最高性能のモデルと位置づけられています。
位置づけは新モデルで、まだ一般提供ではなくプレビューです。
- 今すぐ使える場所:Mistral Studioのプレビュー版API(開発者がアプリから呼び出す仕組み)
- 月末までに公開予定:モデルの重み
- 先行アクセス:サイバーセキュリティの専門家や審査済みパートナー、国の機関。審査を緩めた版でレッドチーミング(攻撃役の安全性テスト)をしている
前と何が違う?
欧州の自前の設備で、ゼロから学習した
ML4は、NVIDIA Grace Blackwell GPU 3,800基を使い、Mistral自社のヨーロッパのデータセンターで学習されました。プレビューの提供も同じ設備です。
欧州の法律のもと、他のデジタル事業者に頼らず運用する提供形態も用意するとしています。学習データには160以上の言語が含まれ、EUの公用語はすべて入っているそうです。日本語が含まれるかは、元記事では言及なしです。
セキュリティで「断らない」強み
Artificial Analysis Cyber Indexという外部評価で、ML4は世界の上位5モデルに入ったとしています。中国以外で開発されたオープンウェイトのモデルでは大差の首位です。
この指標の1つは、実在のオープンソースの弱点を再現し、修正するテストです。ML4はここで82%を取り、全モデルで最高でした。40問のセキュリティ競技問題Cybenchでは93%を解いています。
面白いのは、Claude Opus 5.5やGPT-6 Astraがほぼ0点に近い点です。公式は「作業を拒否するため」と説明しています。守る側は、まず弱点が本物だと示す必要があります。その作業が安全フィルターで止まる、というのがMistralの主張です。
社内テストでは、マルウェアの分析、脆弱性の優先順位づけ、検知ルール作成にも役立ったとのことです。
コード作成と業務の自動化
ML4はコード作成の評価で、次の数字を出しています。
- DeepSWE v1.1:61.7%
- SWE-Atlas-QnA:59.4%
- Terminal-Bench 4:28.3%
- Coding Agent Index:49.8%(DeepSeek V4 Pro 0813とQwen3.8 Maxの上)
Surge AIによる人間の盲検評価(5段階)では、5モデル中2位の3.74でした。1位はClaude Opus 5の4.22です。Kimi K3は3.59、GLM-5.3は3.60、GLM-5.2は3.40でした。
業務の自動化では、Gmail、Google Sheets、Slack、Salesforceなど657の業務を試すAutomationBenchで59.9%です。長い知的作業を測るAA-Briefcaseでは1,393 Eloでした。
画像を読む力が大きく上がった
公式は、画像理解が「ステップチェンジ(一段上の進化)」だと述べています。文書、グラフ、自然画像を読み解けます。
デモでは、巨大な衛星画像を調べる場面や、設計図を拡大して確認する場面が紹介されました。ビジュアルグラウンディング(画像内の物の位置を特定する力)では、Dense 200でGPT-6-Astraを42%対41%で上回ったとしています。
科学・法律・金融にも対応
SciCode-Verifiedではオープンウェイトの中で最高水準だとしています。ハートリー・フォック法のシミュレーションを一度の指示で作れる例も挙げています。
法律と金融では、vals.aiによる第三者評価でGPT-6-Astraを上回ったとしています。HarveyAIのLegal Agentでは、オープンソースのモデルをすべて上回りました。
安全面の数字
Lakeraの公開ベンチマークB3では、攻撃の93.3%を防ぎました。KORA Benchmarkでは1.691点(満点は2)で、同社のオープンモデルとして過去最高です。
サイバー関連の悪意ある依頼を断る率も、JailbreakBenchなどでオープンモデルの中で最も高いとしています。専門的な調査には応じつつ、悪用は断る、という説明です。
数字で見るとどう変わった?
前のバージョン(Mistral Large 3など)と比べられる数字は、元記事には出ていません。以下はML4単体の数字です。
- 規模:1兆パラメータ、アクティブ520億
- 学習設備:NVIDIA Grace Blackwell GPU 3,800基
- Cybench:93%(40問)
- 脆弱性の再現と修正:82%
- Coding Agent Index:49.8%
- AutomationBench:59.9%
- Lakera B3:攻撃の93.3%に耐性
- KORA:1.691(満点2)
注意したいのは、これらが自社発表の数字だという点です。比較相手やテスト条件で結果は変わります。人間評価のようにMistral自身が実施したものもあります。
ライバルと比べてどう?
オープンウェイトのモデルの中では、DeepSeek V4 Pro、Kimi K3、GLM-5.3などと並べ、多くの項目で上回ったと主張しています。
一方、コード作成の人間評価ではClaude Opus 5に届いていません。ここは弱点です。クローズドな最上位モデルと全面的に互角とまでは、元記事も言っていません。
強みはセキュリティ作業で断らないこと、重みを手元に置けること、欧州の事業者が運用することです。
(編集部注)クローズドなモデルは自社運用ができず、提供元の方針に依存します。この点が、オープンウェイトを選ぶ最大の理由になりやすいと考えられます。
料金は?
元記事では、価格の言及はありません。
分かっているのは次の点です。
- プレビューAPIはMistral Studioで今日から利用可能
- 重みは月末までに公開予定
- 無料枠の有無は元記事では言及なし
日本で使える?
まだ分かりません。元記事に、日本からの利用可否は書かれていません。
- アクセス先:Mistral Studio(公式サイト)
- 必要なもの:Mistralのアカウントが必要と考えられます(編集部注)。詳細は公式で確認してください
- 日本語対応:160以上の言語で学習とありますが、日本語の品質は元記事では言及なし
- 提供地域:世界の複数リージョンで提供予定。欧州ではMistral運営の環境もあるとのこと
- 注意:審査を緩めた版は、審査済みパートナーのみが対象です
自分にはどう関係する?
エンジニアなら
まずプレビューAPIでコード作成やエージェント用途を試す価値があります。重みが公開されれば、自社環境での運用も選べます。性能は自分のタスクで確かめましょう。
企画・マーケティングなら
直接の影響は小さめです。ただし、文書やグラフの読み取り、表やスライドの作成が強化されたとされています。社内資料づくりでの活用を想定できます。
経営者・管理者なら
セキュリティ部門にとって重要です。外部サービスの方針で急に使えなくなるリスクを避け、自社のポリシーのもとで動かせる選択肢になります。データを国外に出せない企業も検討しやすくなります。
これまでの流れ
サイソクの前回記事では、スクラッチ開発の経緯やデモを中心に解説しました。今回は公式の評価数字を整理しました。
まとめ
重みが月末に出れば、実際の性能を第三者が確かめやすくなります。追加のベンチマークやアーキテクチャの詳細も、順次公開される予定です。
次の一手は3つです。開発者はMistral Studioでプレビューを試してください。セキュリティ担当は、自社運用の可否を重みの公開後に検討しましょう。価格と日本での提供条件は、公式で確認してください。