概要
ニッセイ基礎研究所が公表したレポートによると、インドでは統一決済インターフェース(UPI)と呼ばれる仕組みが急速に普及しています。
異なる銀行やアプリの間でも共通のQRコードで瞬時に支払いや送金ができるため、これまで現金が中心だった社会のキャッシュレス化が一気に進んでいます。
取引件数は増えましたが、今後は運営のための財源確保や手数料のあり方が新たな課題となっています。
何が発表された?
ニッセイ基礎研究所の経済研究部で准主任研究員を務める斉藤誠氏が、2026年10月28日にレポートを発表しました。
タイトルは「インドの現金社会に決済革命~UPI急成長の背景と新たな課題~」です。
このレポートでは、インドで普及する決済インフラである統一決済インターフェース(UPI)の導入から現在の急成長に至るまでの背景が整理されています。
経済的な意義や、各国との比較を通じた今後の課題も多角的にまとめられています。
発表の位置づけとしては、新興国におけるフィンテック(FinTech:金融と技術を組み合わせた仕組み)の急激な変化を捉えた最新の調査レポートとなります。
取引件数が約2416億件へ急拡大
UPIの利用実績は、開始当初から桁違いの規模で拡大を続けています。
レポートによると、2016年度に約1,800万件だった取引件数は、2025年度には約2416億件へと膨れ上がりました。
それに伴い、取引金額も約314兆ルピーという巨大な規模に達しています。
対面決済における現金比率の大幅低下
決済手段の主役交代は実際の店舗でも起きています。
レポートでは、対面決済額における現金の比率が示されました。
2019年の71%から、2025年には14%まで急激に低下しています。
わずか数年の間に、日常の買い物における現金の役割が大きく縮小したことが分かります。
なぜ今、ここまで普及したのか?
UPIが短期間でインド全土に浸透した背景には環境整備があります。
それは利用者側と店舗側の双方における整備です。
利用者側では、銀行口座の保有率が飛躍的に高まりました。
その理由は次のとおりです。
- 政府による給付金の直接振込
- ジャン・ダン計画(金融包摂を目的とした口座開設推進策)の実施
- 銀行代理人の活用
それに加えて、スマートフォンの普及と安価な通信環境の整備が下支えとなりました。
店舗側にとっても、高額な専用端末を導入する必要がないという利点がありました。
安価な負担でQRコード決済を始められたことが大きな要因です。
また、高額紙幣の廃止やコロナ禍といった社会的な契機も影響しました。
これらは人々のデジタル決済への移行を強く後押ししました。
商店の資金繰りと金融アクセスの改善
UPIの導入は、小売店や個人商店の経営にも良い影響を与えています。
現金管理の手間が減りました。
売上金の入金を待つタイムラグがなくなることで、商店の資金繰りが安定する効果をもたらしています。
さらに、日々の決済履歴がデジタルで残るようになります。
これまで銀行口座を持てなかった人々や小規模な事業者が融資を受けやすくなりました。
これは正式な金融サービスからの金融アクセスの改善も期待されています。
数字で見ると?
ニッセイ基礎研究所のレポートで示されたUPIの普及に関する主な実績や推移を以下の表に整理します。
| 比べること |
前(過去の数値) |
今回(最新の数値) |
変化 |
| 取引件数 |
約1,800万件(2016年度) |
約2,416億件(2025年度) |
約13,400倍超に拡大 |
| 対面決済の現金比率 |
71%(2019年) |
14%(2025年) |
57ポイント減 |
| 取引金額 |
言及なし |
約314兆ルピー |
巨大な規模に到達 |
※数値はいずれもニッセイ基礎研究所のレポートに基づくものです。
なぜ今このテーマなのか?無料モデルの課題
急成長を遂げたUPIですが、今後は運営財源の確保という大きな課題に直面しています。
これまで多くの部分で無料モデルとして提供されてきました。
しかし、システムの持続可能性を維持するための財源づくりが必要となっています。
海外の事例を見ると、ブラジルやタイでは仕組みが異なります。
低額の加盟店課金と即時決済の普及がうまく両立しています。
こうした状況を受け、インド政府は2026年9月に一部の店舗決済への手数料導入を発表しました。
今後は加盟店側への負担増による利用の停滞をいかに避けるかが重要です。
同時に、必要な財源を確保できるかが今後の成長を左右する重要な焦点となります。
自分に関係ある?
この動向は、直接インドでビジネスを展開する企業にとって関係が深い話題です。
現地に進出している日系企業にとっても同様です。
決済インフラの急速なデジタル化に対応できなければ問題が起きます。
現地での商取引において競合に遅れをとる可能性があります。
また、日本国内においても学ぶべき点は少なくありません。
インバウンド対応や今後の決済システムのあり方を考える上で役立ちます。
新興国における巨大なキャッシュレス成功事例から学ぶべき点は少なくありません。
もう使える?取引できる?
- インド国内での利用方法: 現地の銀行口座と対応するスマートフォンアプリを準備し、加盟店に提示されたUPI対応のQRコードを読み取ることで誰でも利用できます。
- 公式情報の確認: 詳細なレポート内容や統計データ、今後の経済動向については、発信元である「ニッセイ基礎研究所」の公式ウェブサイトおよび公開レポートをご確認ください。
まとめ
インドの決済事情は大きく変わりつつあります。
現金中心の社会からUPIを軸としたデジタル決済へ完全にシフトしつつあります。
今後は手数料導入に伴う市場への影響が注目されます。
持続可能な運営体制の確立がどのように進むのかも注目されます。
読者の皆様におかれましては注意が必要です。
ニッセイ基礎研究所などの信頼できるシンクタンクの最新レポートに目を通してください。
新興国市場における急激なデジタル化の潮流を正確に把握しておくことが重要です。