かんたん版:専門用語を使わずに説明しています
ひとことで言うと
全国の医薬品や医療用品を扱う「卸売業(=メーカーから病院や薬局へ薬を届ける仕事)」の市場が、17兆円という巨大な規模に成長しています。ただ、その売上の大部分を少数の大手が占めており、中小の会社は苦しい状況が続いています。
何がすごいの?
東京商工リサーチの調査によると、医薬品卸売業484社の2025年度の売上高は16兆8,488億円でした。コロナ禍の2021年度から4年間で約2割も伸びており、業界全体としては好調に見えます。しかし、利益の面では「薬価(=国が決める薬の価格)の引き下げ」や「人件費・物流費の上昇」が重くのしかかっています。売上1,000億円を超える大手が利益の約9割を稼ぎ出す一方、中小企業は厳しい経営を強いられており、業界内での格差が広がっているのが現状です。
自分に関係ある?
このニュースは、医療機関や薬局で働く人、あるいは製薬業界と取引がある事業者にとって重要です。薬の安定供給には、厳格な品質管理や全国への物流網が必要です。そのため、大手への集約がさらに進むと見られています。もし皆さんの取引先が中小規模の医薬品卸であれば、今後の再編や経営状況の変化に注意しておく必要があるかもしれません。
使ってみるには
この調査は東京商工リサーチが公開しています。詳細なデータや業界全体の動向については、東京商工リサーチの公式サイトにある「TSRデータインサイト」から最新のレポートを確認してみてください。企業ごとの詳しい経営状態を知りたい場合は、同社が提供する企業情報サービスなどを活用して、取引先の与信管理(=相手が倒産しないか等のチェック)に役立てることができます。
概要
医薬品や医療用品を扱う卸売業の市場規模が、17兆円規模にまで拡大しました。一方で、売上の8割以上を少数の大手企業が占める「二極化」が鮮明になっています。
利益確保に苦しむ中小企業も増えています。業界全体で生き残りをかけた再編が続いています。
何が発表された?
東京商工リサーチが2026年10月28日に発表した調査結果があります。全国の主要な医薬品・医療用品卸売業484社の2025年度の業績が判明しました。
売上高合計は16兆8,488億円です。これは前年度比で4.5%の増加となります。
コロナ禍の2021年度から比較すると、4年間で19.4%の成長を遂げました。本調査は、同社の企業データベースから抽出した484社を対象に、2025年度決算を分析したものです。このデータは、業界の現状を把握するための重要な指標となります。
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大手への集中が加速
売上高1,000億円を超える大手企業は29社です。全体のわずか5.9%に過ぎません。しかし、この29社だけで以下のシェアを占めています。
医薬品という性質上、厳格な品質管理や全国への安定供給が求められます。そのため、規模の大きな企業に役割が集約されているようです。大手は合併や統合で効率化を図っています。このシェア拡大傾向は今後も続くとみられます。
利益の伸びは鈍化
全体では4年連続の増益を維持しています。しかし、増益率は年々下がっています。
- 2022年度:前年度比121.3%増
- 2025年度:同0.5%増
売上は増えても、薬価引き下げや物価・人件費の上昇が利益を圧迫しています。黒字企業の割合も2年連続で低下しました。中小・零細規模を中心に採算が悪化しています。
倒産・休廃業の現状
2025年の休廃業・解散、倒産件数は合計90社でした。2024年の115件から減少しました。しかし、依然として厳しい経営環境にある企業が存在します。
倒産した9社はすべて清算型の破産です。再建型の民事再生などは発生していません。2024年は2013年以降で最多の件数でした。2年ぶりに100件を下回りました。
数字で見ると?
| 項目 |
数値 |
出典 |
| 2025年度売上高合計 |
16兆8,488億円 |
東京商工リサーチ |
| 前年度比売上高増減 |
4.5%増 |
東京商工リサーチ |
| 利益合計 |
5,147億9,700万円 |
東京商工リサーチ |
| 大手(1,000億円超)シェア |
売上83.5%、利益89.3% |
東京商工リサーチ |
| 2025年倒産・休廃業数 |
90社 |
東京商工リサーチ |
なぜ今?業界への影響は?
高齢化に伴う医薬品需要の増加は追い風です。しかし、薬価改定の影響や物流コスト、人件費の上昇が経営の足かせとなっています。
今後は、単に薬を運ぶだけではいけません。医療機関のシステム導入支援や物流の高度化など、高い付加価値を提供できる企業しか生き残れない状況です。
医薬品取扱いは法令上の要件が厳しいです。安定供給には十分な財務基盤が不可欠です。大手による合併や統合が今後も活発化すると見られます。
自分に関係ある?
医療機関や薬局、製薬会社と取引がある事業者にとっては重要です。卸売業者の再編は仕入れや物流網に直結する問題だからです。
特に中小規模の卸売業者は採算確保が難しくなっています。取引先の経営状態には注意が必要です。資本金1千万円以上の企業が8割を占める業界です。規模の大小に関わらず経営基盤の強さが問われます。
消費者にとっては、大手への集約が進むことでメリットもあります。より効率的で安定した薬の供給が期待できる側面もあるからです。
もう使える?取引できる?
本調査は統計データであり、直接申し込むサービスではありません。取引先の経営状態を確認したい場合は、東京商工リサーチが提供するサービスを利用できます。
「TSR REPORT」やインターネット企業情報サービス「tsr-van2」などで、個別の与信調査を行うことが可能です。詳細は東京商工リサーチの公式サイトをご確認ください。
1,200円の低価格で企業情報を取得できるサービスもあります。ビジネス上の判断に役立てられます。
まとめ
医薬品卸業界は、売上規模が拡大する一方で、大手への寡占化と中小の苦境という二極化が進んでいます。取引先がある場合は、定期的に経営状況や財務基盤を確認する習慣をつけることが重要です。
業界の再編は今後も続く見通しです。常に最新の情報を収集することが、リスク管理の第一歩となります。