概要
DX需要や生成AIの普及により、情報サービス業の業績が過去最高を記録しました。当期利益は5年間で1.8倍に急増しています。しかし、利益の8割以上を大手が独占している状況です。市場が拡大する一方で、小規模企業は人材確保や投資の壁に阻まれています。倒産が増加するなど、二極化が進んでいます。
何が発表された?
東京商工リサーチ(TSR)は2026年10月27日に「情報サービス業」の業績動向調査を発表しました。業界全体が好景気に沸いています。調査対象となった4,417社の実績は以下の通りです。
- 2025年度売上高:32兆6,569億円(前年度比7.7%増)
- 2025年度当期利益:3兆2,755億円(同28.9%増)
この調査は、2021年度から2025年度までの5期連続で比較可能な企業を抽出しました。コロナ禍以降の業界構造の変化を浮き彫りにしています。生成AIの普及がソフトウェア開発やテスト、ドキュメント作成といった業務の付加価値を高めました。これが利益率の向上を後押ししています。
中身をくわしく見ると?
大手への利益集中が加速
情報サービス業の成長は、業界全体に均等に分配されているわけではありません。従業員300人以上の大手企業が、売上高と当期利益のそれぞれ8割以上を占めています。2021年度から2025年度にかけての当期利益の増加率は以下の通りです。
- 大手企業:82.0%増
- 49人以下の小・零細企業:33.5%増
成長力に2倍以上の開きがあります。これが格差拡大の要因となっています。
小規模企業に忍び寄る倒産の影
マーケットの拡大とは裏腹に、足元では小・零細企業の淘汰が加速しています。2026年度上半期の情報サービス業の倒産件数は174件に達しました。これは過去10年間で最多です。特に従業員5人未満の企業が倒産全体の8割以上を占めています。経営基盤の脆弱さが露呈しました。大手企業が賃上げで高度なIT人材を囲い込んでいます。一方で、小規模企業は採用難と下請け依存から抜け出せません。利益を確保できない構造が定着しています。
求められる「高付加価値化」への転換
今後の競争力を左右するのは、AIの活用方法です。単なる効率化のツールとして使うだけでは不十分です。顧客の業務知識やセキュリティ対応と組み合わせた「高付加価値サービス」を提供できるかが問われます。東京商工リサーチの分析では、小・零細企業への助言が示されています。特定業界への専門特化や、上流工程への進出など、価格競争から脱却するための独自の戦略が不可欠です。
数字で見ると?
| 項目 |
2021年度 |
2025年度 |
変化(伸び率) |
| 売上高 |
24兆6,654億円 |
32兆6,569億円 |
32.4%増 |
| 当期利益 |
1兆8,017億円 |
3兆2,755億円 |
81.8%増 |
※出典:東京商工リサーチ調べ(4,417社比較)
なぜ今?業界への影響は?
2022年11月のChatGPT公開以降、生成AIは急速に進化しました。今や情報サービス業の現場に不可欠な存在です。AIエージェントの活用により、複数の作業を連続処理して開発期間を短縮する動きが本格化しています。この技術革新は、投資余力のある大手企業にとって生産性を引き上げる武器となりました。一方で、AI関連への投資や人材採用にリソースを割けない中小企業は、取り残されるリスクが高まっています。(編集部注:この傾向は、IT業界に限らず、デジタル化の波が速い業種全体に共通する構造的な課題と言えます)
自分に関係ある?
IT業界で働く会社員にとって、所属する企業の規模は今後のキャリア形成に直結します。大手企業は大型案件や専門性の高いプロジェクトを抱えています。待遇改善も進んでいます。しかし、小規模企業は「働き方」や「賃金」の面で厳しい環境が続いています。IT企業と取引を行う一般企業の担当者にとっても、委託先が「大手か、それ以外か」という視点は重要です。技術力やセキュリティ、安定性の観点から判断材料となります。小規模企業の赤字企業率は21.7%です。これは大手(4.2%)の5倍以上です。取引先の選定にはこれまで以上に慎重なリスク管理が求められます。
もう使える?取引できる?
- 本調査結果の詳細は、東京商工リサーチの公式サイト「TSRデータインサイト」で公開されています。
- 企業情報の詳細調査や与信管理については、同社が提供する「TSR REPORT」や「tsr-van2」などのサービス窓口で確認可能です。
- 読者が次にできること:取引先企業の経営状況を確認する、または所属企業のDX戦略が「高付加価値化」に向かっているか再点検する。
まとめ
情報サービス業はAI需要で過去最高の利益を上げています。しかし、二極化は当面続く見通しです。読者は、取引先や自身の所属企業の立ち位置を数字で冷静に分析してください。今後の事業戦略やキャリア選択に役立てていきましょう。