上場していない会社の株を持つ人や、これから持つ予定の人に関わる話です。今回の発表では、個人が今すぐ行う手続きは示されていません。
非上場株式は、証券取引所に上場していない会社の株のことです。スタートアップの株は、上場するまではこれにあたります。
約3億円の出資と、3つの連携テーマ
JPX総研の発表によると、出資は2つの方法で行われました。1つは、スマートラウンドが発行する新株予約権(決めた価格で将来株を買える権利)の引受です。もう1つは、既存株主から株式を譲り受けることです。合わせた金額は約3億円です。
(編集部注)新株予約権の引受は会社に資金が入る出資で、株式の譲受は既存株主の株を買う取引です。
JPX総研は、日本取引所グループ(JPX)の子会社です。JPXグループは、金融資本市場の利便性を高め、市場の持続的な発展を図ることを使命としています。今回の出資も、その使命に沿った取り組みだと説明しています。
同じ日に、両社は次の3つのテーマを検討する覚書(合意した方向性を書面にしたもの)を結びました。
- 非上場株式の流通・流動性向上(取引のしやすさを高めること)
- スマートラウンドのデータ基盤と、JPXグループの市場インフラや情報サービスとの連携
- スタートアップとその株主・投資家への情報提供、サービスの相互紹介
両社は、この3つを中心に協議し、連携を具体化していくとしています。
日本の上場前の株の流通をどう広げるか
発表では、日本のエコシステム(スタートアップや投資家、会社が互いに支え合う仕組み)の課題として、2つが挙げられています。1つは、スタートアップへの成長資金の供給を増やすことです。もう1つは、投資したお金が次の投資に回る仕組みをつくることです。
東京証券取引所に設けられた「グロース市場の発展に向けた検討会」でも、上場前のスタートアップ株の取引機会が限られていることが指摘されています。グロース市場は、成長企業が上場する市場です。
スマートラウンドは2018年5月30日に設立されました。スタートアップと投資家のやり取りを効率化するデータ作成・共有サービス「smartround」を運営しています。資本政策や株主管理、ストックオプション管理などの実務を、双方でデータとして共有できる仕組みです。
さらに、2026年10月2日からは、子会社のスマートラウンド証券を通じて、SPO(Secondary Private Offering)の提供を始めています。SPOは、既存株主が持つ株を新しい投資家に譲る非上場株式のセカンダリー取引を、スタートアップの成長戦略に組み込むサービスです。
JPX総研は、このサービスの事業基盤をもとに、非上場株式のセカンダリー取引の環境整備を支援するとしています。出資を通じて、上場前後の企業と投資家を取り巻く仕組みの改善に取り組む考えです。
今回の出資は、JPX総研の「JPX Ventures」の最初の案件です。JPX Ventures は、JPX総研フロンティア戦略部の社内組織で、スタートアップへの少数株主としての出資と協業を通じて市場の魅力を高めることをめざしています。4月から本格的に活動を始めたとしています。
編集部の見方では、取引所グループが上場前の株の流通づくりに関わり始めたことが、今回の大きな意味です。取引の場、データ、情報提供が一体で進むなら、上場前の株の状況が外から分かりやすくなる可能性があります。ただし、これは発表からの推測です。取引がどの程度増えるかを示す数字は、まだ発表されていません。
