この決算で、花王の製品の価格や買い方がすぐ変わるわけではありません。関係が深いのは、株主や取引先など、同社の業績を確かめたい人です。2026年12月期の配当予想も修正されていません。
花王は、洗剤や紙おむつなどの日用品、化粧品、化学品を手がけるメーカーです。今回の対象期間は2026年1月1日から9月30日までの9カ月間です。花王が11月5日にTDnet(適時開示の仕組み)で公表した第3四半期決算短信によると、数字は次のとおりです。
営業利益は28.1%増、土地売却益115億円を含む
売上高は前年同期比7.1%増の1兆3,193億円でした。内訳は為替の影響が4.0%増、実質(為替を除く)が3.1%増です。実質のうち、数量等は0.2%減、価格は3.3%増でした。売れた量は少し減り、価格の見直しが増収を支えた形です。
営業利益は1,465億円で、28.1%増えました。営業利益率は前年同期の9.3%から11.1%に上がっています。税引前四半期利益は1,487億円、四半期利益は1,057億円でした。基本的1株当たり四半期利益は116.12円です。
花王は増益の理由として、グローバルコンシューマーケア事業(日用品と化粧品の部門)が国内外で伸びたことと、ケミカル事業の収益性が改善したことを挙げています。第1四半期にはロジスティクス最適化の一環で土地を売り、115億円の売却益を計上しました。この一時的な利益が営業利益に含まれています。
なお、花王は2026年第1四半期からIFRS第18号(財務諸表の表示に関する新しい会計基準)を早期適用しています。前年の営業利益と税引前利益は、この基準に合わせて修正した数字です。
事業別では、主な動きは次のとおりです。
- ファブリック&ホームケア製品: 売上高2,940億円(5.6%増)、営業利益575億円。日本で衣料用洗剤が数量増と価格改定でシェアを広げました
- ヘルスビューティケア事業: 売上高3,417億円(6.2%増)、営業利益323億円。「ビオレ」のUVケア製品が好調でした
- 化粧品事業: 売上高1,994億円(10.1%増)、営業利益98億円(前年同期は29億円)。8月発売の「SOFINA」の新製品が好調でした
- ケミカル事業: 売上高3,688億円(9.5%増)、営業利益270億円(前年同期は223億円)。油脂製品の利幅改善と電子材料分野の拡販が寄与しました
一方で、ベビー用紙おむつ「メリーズ」は、日本とアジアのどちらも競合の攻勢などで売り上げが前年を下回りました。欧州のプロフェッショナルヘアケア製品では「GOLDWELL」が苦戦しています。
日本の売上は7,308億円、海外比率は44.6%に
日本の売上高は7,308億円で、5.1%増でした。日本には為替の影響がないため、実質も5.1%増です。海外の売上高は、アジアが10.8%増、米州が9.5%増、欧州が7.9%増でした。ただし実質では、アジアが2.2%増、米州が0.6%増、欧州が2.9%減にとどまります。円安による押し上げが大きい点に注意が必要です。
売上高に占める海外の割合は、前年同期の43.6%から44.6%になりました。
日本の市場環境について、花王は賃上げが続く一方、物価上昇で個人消費は力強さを欠いていると説明しています。トイレタリー市場は、小売店の販売実績も消費者購入調査データも前年を上回りました。化粧品市場は、小売店の販売実績は上回ったものの、消費者購入調査データはわずかに下回りました。
財政状態では、2026年9月末の資産合計が1兆8,671億円で、前年度末より79億円減りました。棚卸資産は306億円増えています。負債合計は455億円減の7,349億円、資本合計は375億円増の1兆1,322億円です。親会社所有者帰属持分比率は56.7%から59.1%に上がりました。
通期の連結業績予想は、8月5日の公表から変えていません。会社の予想は次のとおりです。
- 売上高: 1兆8,000億円(前期比6.6%増)
- 営業利益: 1,900億円(16.2%増)
- 親会社の所有者に帰属する当期利益: 1,350億円(12.4%増)
花王は第4四半期について、高付加価値化や価格改定を続けるとしています。一方で、原材料価格や国際的なサプライチェーンのコストの上昇、海外事業の収益基盤を強めるための費用、中東情勢の緊迫化に伴う世界経済の減速といった不確実性を想定しています。予想に使った為替レートは、157円/米ドル、182円/ユーロ、22.8円/中国元です。