結論として、社内チームが設計案を試す反復は速くなった一方、量産に向けた仕上げにはまだ人の確認が欠かせません。
ここでいう物理製品の設計とは、機械の部品、電子回路、ソフトウェア、製造条件を組み合わせて、実際に作れる製品に仕上げる仕事です。OpenAIの発表によると、これまでは専用ソフトを使い分ける必要があり、AIにその作業を手伝わせる研究を進めています。
GPT-6 Astraが設計した会話用デバイス
OpenAIは、AIモデル「GPT-6 Astra」が人の手による修正なしでどこまで装置を作れるかを試しました。作ったのは、プログラミング支援ツールCodexと会話するための装置です。
GPT-6 Astraは、機能要件の整理から、筐体(外側のケース)、プリント基板(電子部品をつなぐ板)、ソフトウェアとの連携までを担当しました。外観は、Work Louderとの協業や、ゲームや玩具の参考資料をもとに考えたとされています。
内部構造の設計や、基板上の部品の配置と配線も担当しました。画面や操作の設計に加え、装置とCodexをつなぐファームウェア(機器内蔵のソフト)も生成しています。
設計は、社員2人が副業のような形で1週間未満で行いました。委託先の工場が、少数の試作機を1か月未満で作っています。
ただし、量産できる状態にするには、何度も確認と修正が必要でした。OpenAIによると、Astraは製造側の制限、公差(許される寸法のずれ)、組み立てに必要な細部を、一貫して考慮できませんでした。OpenAIはこの弱点を、今後のモデルが改善すべき点と位置づけています。
ハード部門の利用量は2月から23倍
OpenAIのハードウェア部門とインフラ部門は、CodexとChatGPTを使っています。用途は、CADモデルの作成と修正、製造図面の準備、シミュレーションの設定、設計のレビューです。対象はロボット工学と計算基盤の両方にわたります。
2月以降、これらの部門でのモデル利用量はトークン(AIが文字を数える単位)換算で23倍に増えました。OpenAIは、この1年で最先端モデルの能力が上がり、社内で新しい案を試して改良する速度が上がったと説明しています。
OpenAIは過去にも、AI開発のコストをタスク単価で測る考え方を示しています(OpenAI、AI開発のコストを抑える4つの手法を解説)。
BenchCAD 2.0の平均点は0.875
OpenAIは、コーディングと工学の知識を組み合わせる課題で、新しいモデルの進歩も測っています。使ったのは社内の評価「BenchCAD 2.0」です。3D部品や組み立て品を再現できるか、回路基板の接続を見抜けるかを調べます。
結果は次のとおりです。
- 新しい社内モデル:平均0.875
- GPT-6 Astra(推論の設定が最高の場合):平均0.594
OpenAIは、工学の工程には設計以外の要素も多いと断ったうえで、この改善を、専門家の作業の反復速度を上げる力の初期的な証拠と見ています。(編集部注:この評価は社内のもので、第三者による再現は示されていません。)
Mazdaとレーシングチームでの検証
OpenAIは、少数の産業界の協力者と、実際の工学課題で検証しています。協力者の技術者がモデルの出力を確認し、正確さと実用性を評価します。
Chip Ganassi Racing(CGR)との協力は拡大されます。研究開発チームと、既存部品の3Dスキャンを、編集できるCADモデルと2次元の製造図面に変える流れを試しています。元の設計ファイルが残っていない場合に役立つ作業です。CGRの技術者が、正確さと製造のしやすさを確認します。
Mazdaとは、新しい研究協力を発表しました。OpenAIの研究チームと、顧客先に入って支援するForward Deployed Engineeringチームが、Mazdaの空力と衝突安全の技術者と取り組みます。空気の流れと構造の挙動のシミュレーションを使い、意匠とコストも考慮しながら性能向上の方法を探ります。
Mazdaの例では、GPT-6 Astraが新しいノーズ形状を作り、気流をシミュレーションして、有望な案を絞り込む使い方が示されました。目的は車両の空気抵抗の低減です。成果は今後数か月のうちに共有される予定です。
協力者の募集
OpenAIは、機械設計、電気設計、電気機械設計、メカトロニクスなどの分野で、価値の高い使い道やソフトウェアツールを一緒に見つける協力者を募っています。設計、解析、製造、生産に関わる技術者、エンジニアリング企業、ソフトウェア会社が対象で、公式ブログのフォームから連絡できます。
ChatGPTとOpenAIのAPIは日本で使えます(当サイトの確認:11/3)。ただし、今回の設計支援の取り組みの日本での提供は発表されていません。
編集部の見方では、試作機の事例は、AIが設計の入り口を短縮できる一方、量産条件の理解が課題だと示しています。