今すぐ一般の人が使えるAIではありません。OpenAIの公式ブログによると、対象は認証を受けた防御側の組織や研究者です。
GPT-6 Cyberは、サイバーセキュリティ専用のAIモデルです。ソフトウェアの脆弱性(セキュリティ上の弱点)を見つけ、その弱点を突く攻撃コード(エクスプロイト)が実際に動くかを検証できます。攻撃を防ぐ側が、先に弱点を見つけて直すために使うモデルです。
「攻撃コードを作れるAIは危ないのでは」と感じる人もいるでしょう。OpenAIは、攻める力と同時に、利用の範囲を守る力を大きく上げたと説明しています。

攻める力と、範囲を守る力が両方上がった
攻める力と範囲を守る力が上がりました。
- 攻める力:約16ポイント上昇
- 範囲を守る力:94.49%から99.93%に上昇
ExploitGymは、AIが指定された脆弱性を実際に突けるかを測る試験です。GPT-6 Cyberの得点は48.5%でした。
前のGPT-5.6 Cyberは32.1%で、相対値で51%の改善になりました。
| 比べること | 前(GPT-5.6 Cyber) | 今回(GPT-6 Cyber) | 変化 |
|---|---|---|---|
| ExploitGymの得点 | 32.1% | 48.5% | 約16ポイント上昇 |
| 範囲外の攻撃を避けた率(指示文なし) | 94.49% | 99.93% | 上昇 |
範囲を守る力は、範囲外のサービスを攻撃しないかで測っています。この試験では、わざと攻撃しやすくしたサービスを用意し、そこに手を出さないかを見ます。
課題の答え(フラグ)につながる入口があっても、範囲外なら攻撃しない必要があります。この試験は、Hugging Faceの事件を参考に作られたと説明されています。
本番で使うときの安全用の指示文を付けると、範囲外の攻撃を避けた率は100%でした。考えている途中の記録でも、モデルが「範囲外の認証情報は調べない」(don't explore out of scope credentials.)と判断している例が示されています。
Webアプリの脆弱性を探す新しい試験では、ソースコードを見ない条件で、GPT-6 Cyberが40.3%の脆弱性を見つけました(検出率)。同じ試験でGPT-6 Astraは32.0%でした。GPT-6 Astraは、同社の主力モデルです。
OpenAIは、この能力をもとに同社の危険度評価(Preparedness Framework、AIの能力を段階で分ける基準)を行いました。サイバー分野のリスクを「Critical」(重大)に分類しています。前のGPT-5.6 Cyberは「High」(高)でした。
GPT-5.6 Cyberは、AWS GovCloudでも承認済みの顧客向けに利用できるようになっています(GPT-5.6 Cyberの記事)。
Firefoxで81件、Linuxで948件、攻撃の検証が進んだ
OpenAIの研究者は、GPT-6 Cyberを使ってFirefoxで81件の未知の脆弱性を見つけました。いずれもMozillaが高い深刻度に分類したものです。
GPT-6 Cyberは修正案(パッチ)の作成も手伝いました。OpenAIは、その修正案をMozillaに渡したとしています。Mozillaは、多くの脆弱性の修正版をすでに公開しています。
Linuxでは、1,724件の脆弱性を再現しました。そのうち948件で、動く攻撃コードを作りました。
同じ試験環境で前のGPT-5.6 Solが作ったのは166件で、5倍を超えています。
OpenAIは、重大な問題304件を修正案とともにLinuxのメンテナー(開発の管理者)に報告したとしています。
Cisco、Calif、CodeRabbitの各社も、脆弱性の調査やコードレビュー(書いたプログラムの確認)に使っているとしています。
一方で、悪用されるおそれも高まります。OpenAIは、監視と制限を強めたと説明しています。
Daybreak RedのAPI(アプリから呼び出す仕組み)は、既定で許可されたネットワークからのアクセスに限られます。認証情報の不正利用も監視します。
データを保存しない設定(Zero Data Retention)でAPIを使う利用者は、原則としてPSPを使う必要があります。
PSPは、暗号化した記録を利用者のクラウドに30日間保存する仕組みです。OpenAIの社員は、中身を見られない形で安全確認をします。
OpenAIは、モデルを真似して作る行為(蒸留)を狙う集団も警戒していると書いています。
発電所や浄水場などの重要インフラを守る組織には、承認を受けた人向けの「Daybreak Red for Critical Infrastructure」を新たに設けます。
資金面では、10億ドル(約1,580億円。1ドル=158.25円、11/4確認のECB参照レートで計算した税別の目安。サイソク編集部の計算)の助成制度「Daybreak for Frontline Defenders」があります。資源の少ない行政機関や重要サービス事業者の利用を補助します。
OT(工場などの制御システム)の評価は、Dragosが管理された検証環境で行ったとしています。






