Nammu21は、Google Cloudの許可制分散型台帳「Google Cloud Universal Ledger(GCUL)」を使い、シンジケートローンの管理を自動化する概念実証を行いました。Google Cloud公式ブログが11月3日付で紹介しています。
シンジケートローンは、複数の金融機関が組んで企業に資金を貸す仕組みです。許可制分散型台帳とは、参加を認められた組織だけが使う、改ざんしにくい共有の記録簿です。
決済に平均42日、契約の読み解きは人の手
公式ブログによると、融資市場は貸し手・借り手・幹事銀行(融資の事務を取りまとめる銀行)の調整が絶えず必要です。契約書の内容は案件ごとに違い、段階ごとの条件や細かい制約も付きます。
この契約書を各社が人の手で解釈するため、事務負担とデータの分断が生まれていると説明しています。ローン市場協会(LMA)によれば、額面かそれに近い価格のローンの二次市場での決済は、2024年10〜12月期で平均42日、中央値27日でした。資金が長く拘束され、取引相手のリスクも膨らみます。
契約条項を「DCI」に変換する
Nammu21は、各融資枠の契約条件を「Digital Credit Instrument(DCI)」という形に変換します。条件、同意の要件、参加資格、運用ルールなどを、元の契約条項に結びつけたうえで、実行可能な動作として表現します。
この変換は、人が契約書を読まずにプラットフォームが自動で行うと、ブログは説明しています。その後、DCIの条件を使って、台帳上で融資を管理するプログラムを作ります。
プログラムは「gculpy」という言語で書かれます。gculpyはPythonを厳密にした一部だけを使う言語で、型(データの種類)を決めて書くため、安全で読みやすく、監査しやすいとされています。メモリ管理や呼び出しの深さの制限に悩まずに、金融のロジックに集中できる点も利点に挙げています。
意図しない資産の受け取りも防ぐ
GCULには、契約が利用者の代わりにデータを保存する前に、明示的な許可を求める仕組みがあります。公開型のネットワークでは、望まないトークンが組織のウォレットに送りつけられ、会計やコンプライアンスの問題になることがあります。GCULではこれを防げるとしています。
19億4,500万ドルの融資で実証
概念実証で扱ったのは、19億4,500万ドルのタームローンBです。複数の融資枠からなる大型取引の一部という位置づけです。この金額は、1ドル=157.90円で約3,070億円になります(サイソク編集部の計算、為替はECB参照レートから11/2確認)。
流れは次のとおりです。
- 幹事銀行が、Nammu21で変換済みの契約書を選びます。
- 契約条件から台帳上に固有のプログラムが作られ、融資枠の「デジタルツイン(実物と対応する電子的な写し)」になります。
- 幹事銀行が借り手と貸し手の参加手続きを始め、各参加者が自分の画面から招待を承認します。
- 全員の参加後、幹事銀行が主要条件のハッシュ(改ざん検知用の短い符号)を台帳に記録します。台帳上のデータが、台帳外の正本と一致することの証明になります。
同意がそろわない取引は実行されない
二次市場での譲渡や返済も、複数段階の自動処理です。たとえば融資持ち分の譲渡には、新しい貸し手、借り手、幹事銀行の同意が必要です。そろって初めて、台帳上で一括して実行されます。
利払いから融資の完済まで、支払いはすべてGCUL上で完結します。使うのは、トークン化された商業銀行マネーです。外部の決済網は必要ありません。
公式ブログは、設計の柱を3つ挙げています。
- 実行前の検証:契約条件に照らして全操作を確認し、条項違反や無効な譲渡を事前に防ぎます。
- 役割に応じた秘匿:取引戦略や持ち分などは、必要な取引相手にしか見えません。
- 決済の確定:操作はほぼ即時に完了し、元の契約書に基づくデータに結びつきます。
「解釈の食い違い」が摩擦の原因
ブログは、金額は当事者間で突き合わせられても、運用ルールの解釈は突き合わせられないと指摘します。市場の摩擦は、各社が独自にルールを解釈することから生じるとの見方です。これを台帳上で解決すれば、決済期間の短縮、事務負担の軽減、取引相手のリスク低減につながるとしています。
同じ仕組みは、条件が案件ごとに違い、人が解釈している信用取引全般に応用できるともしています。これはNammu21とGoogle Cloudの主張で、今回示されたのは概念実証の範囲です。
日本の読者が確認できること
Universal Ledgerの公式ドキュメントには、300ドル分の無料クレジットで概念実証を始められる案内があります(Google Cloud公式ドキュメント、11/4確認)。日本での提供や、今回のNammu21の仕組みの利用条件は発表されていません。
画像:Google Cloud(公式発表)