公共機関でAIの導入が止まる原因は、性能ではありません。「誰が」「どこで」「いくらで」使うのかに、組織として答えられないことだと、Databricksの公式ブログは説明しています。同社は、この問いに一か所で答える仕組みとして「Unity Gateway」を紹介しました。
この記事で対象になるのは、官公庁や自治体でAIの導入や予算管理を担当する人です。一般の会社員の仕事や料金が、今すぐ変わるわけではありません。
資料には、こんな例が書かれています。ある行政のデジタルチームが、CodexやClaude Codeといった外部のコーディングエージェントを使い始めたとします。コーディングエージェントとは、プログラムを書く作業をAIが自分で進める仕組みです。
開発者は喜びますが、「誰がどのモデルを使えるのか」「AIの支出がなぜ急に増えたのか」と聞かれます。
コンプライアンス部門は、データがどこへ送られているのかを問います。資料によると、そのプラットフォームのリクエストは、別の国のインフラに送られていました。予算部門は費用を把握できず、応答も遅く、不要なトークン(AIが文字を数える単位)まで使われていたといいます。
その結果、承認が出せず、AIプロジェクトは止まります。資料は、問題はAIを必要としていないことではなく、基本的な統制の問いに答えられないことだと指摘しています。
利用者ごとに、使えるモデルと支出の上限を決める
Unity Gatewayは、Databricksに組み込まれたAI利用の管理機能です。組織として使えるAIモデル、コーディングエージェント、AIツールを決め、誰が使えるかを管理者が設定します。
新しいモデルは、発表の当日から使える状態になります。ただし、管理者が有効にしたモデルを、許可された人だけが使います。新しいモデルが、自動ですべての利用者に開放されるわけではありません。
支出の上限は、利用者、チーム、用途ごとに設定できます。すべてのリクエストは記録され、誰がどれだけ使ったかを追えます。
たとえば、ある歳入機関では、調査部門が納税者の記録にAIを使えます。ただし、利用は、その事件を担当する調査官に限られます。
作業ごとに最適なモデルを選ぶ機能として、「Smart Routing」もあります。コーディングの作業を複雑さに応じて、適したモデルに振り分けるものです。
Databricksの別の公式ブログ(「Smart Routing in Unity Gateway」、11/7確認)によると、社内のコーディング作業では次の結果だったとされています。
- 作業1件あたりのコストは、Opus 5のような主力モデルを単独で使う場合の65%で済んだ
- どの単独モデルよりも成果が良かった
Smart Routingは、まだベータ版(試験的な提供)です。
データの処理場所も、管理の対象です。Databricksは、同社が提供するホスト型の基盤モデル(大規模なAIの土台となるモデル)について、処理される地域を管理しています。アカウント管理者は、AIリクエストをワークスペースの地域内で処理するよう求められます。
その地域にモデルがない場合は、ほかの地域での処理を許可するかどうかも選べます。資料は、国の医療サービスが患者の記録にAIを使う場合を例に挙げています。データの行き先を規制当局に示す必要があるからです。
資料は、市民向けの窓口AI、不正の調査、古い文書の読み取り、古いシステムの改修で、必要なモデルが違うと説明します。ひとつのモデルで全部をまかなうと、定型の問い合わせには高くつき、難しい業務には力が足りなくなると指摘しています。
ほかにも、複数の会社のモデル、オープンソースモデル(無料で公開されたモデル)、外部のAIサービスへの接続先に対応します。ひとつの会社に縛られず、業務ごとに選べるとしています。




