ここでいう「人手不足」倒産は、求人が集まらないこと、従業員が辞めてしまうこと、人件費が高くなったことのいずれかが理由の倒産です。勤め先や取引先が中小企業なら、人件費の負担は他人事ではありません。
なお、この集計の対象は、2026年10月に起きた全国の企業倒産のうち、負債が1,000万円以上のものです。そのなかから「人手不足」関連の倒産を抜き出しています。後継者が見つからない、いわゆる後継者難による倒産は対象から外しています。
10月は50件、人件費高騰が32件で64.0%を占める
10月の50件は前年同月比35.1%増です。前年10月は37件だったので、約13件増えた計算になります。10月としては過去最多ですが、単月で最も多いのは2026年7月の63件です。10月は、それに次ぐ2番目の高水準でした。(サイソク編集部の計算)
理由の内訳で増えたのは、人件費高騰です。32件で、前年同月比45.4%増と約1.5倍になりました。「人手不足」倒産に占める割合は64.0%です。前年同月は約22件だったので、差は約10件です。(サイソク編集部の計算)
賃上げは、働く人にとっては前向きな動きです。従業員の待遇を良くして辞めるのを防ぐために、賃上げが進んでいます。しかし、物価高で企業の収益の差が広がっています。売上が伸び悩む会社では、増えた人件費を払い続けるお金が足りなくなります。東京商工リサーチは、賃上げが資金繰りの負担になっている中小企業は少なくないと指摘しています。
1〜10月の累計は418件で、前年同期比28.6%増でした。前年同期は約325件で、差は約93件です。前年の年間最多398件を、10月の時点で超えた点が特徴です。このペースが続くと、1年で約502件になる計算です。残りは2カ月です。(サイソク編集部の計算)
日本の小・零細企業で、8割弱が「人手不足」倒産
資本金1千万円未満の会社は38件で、前年同月比46.1%増でした。全体の76.0%、8割弱を占めます。前年同月は約26件で、差は約12件です。(サイソク編集部の計算)
(編集部注)資本金1千万円未満は、個人経営に近い小さな会社が多い区分です。小さな会社は、大企業に比べて、値上げを取引先に受け入れてもらいにくいこともあります。
産業別では、次の3つが目立ちます。
- サービス業他:27件(前年同月比58.8%増)
- 建設業:8件(前年同月比100.0%増)
- 運輸業:7件(前年同月比75.0%増)
サービス業他の前年同月は約17件で、差は約10件です。(サイソク編集部の計算)
建設業、運輸業、サービス業は、人の作業で仕事を回す業種です。編集部の見方では、人が1人抜けると仕事を回せなくなりやすい業種ほど、人手不足の影響を受けやすいと考えられます。
東京商工リサーチは、今後も「人手不足」倒産は高水準で推移すると見込んでいます。その理由として、賃上げや最低賃金の引き上げ、社会保険の見直しで負担が増していることを挙げています。(編集部注)最低賃金の引き上げは、時給で働く人の給料の下限を上げる動きです。社会保険の見直しは、会社が負担する保険料を増やす場合があります。
編集部の見方では、勤め先や取引先の支払い条件の変化を、普段から気にかけておくとよいでしょう。


