この動画で語られていること
本動画は、ITビジネスや個人投資家として活動する両学長が、視聴者に向けて普遍的なお金の知識を授ける「お金の講義」シリーズの2026年7月配信分をまとめた総集編です。特定の金融商品の勧誘や投資助言を目的としたものではなく、個人のマネーリテラシー向上を主眼に置いています。具体的には、マクロ経済における金融教育の重要性、米国高配当株ETFの仕様変更に伴う新NISA口座での取り扱い、名義や契約形態の違いによる住宅の税制優遇の差、家計管理における貯蓄率の現実的な設定方法、将来設計のためのライフプラン作成手順、2027年に導入が予定されている「こどもNISA」の制度設計と教育的配慮、そして金利上昇局面における実家(不動産)の売却判断基準の7つのトピックについて、図表やデータを交えて論じられています。
解説された内容の詳細
1. 国を強くする金融リテラシー:高い知識がもたらす4つの経済的メリット
動画内では、国民の金融リテラシー(お金に関する知識)の高さと、国家の経済成長(GDP成長率や経済の安定性)には強い相関関係があることが、多くの研究によって示されていると解説されています。金融リテラシーの高い国民が多い国には、主に以下の4つの強みがあります。
- 生産性の向上: 個人が効率的に貯蓄や投資を行うことで、その資金が市場を巡り、企業の経済活動を活発化させます。結果として、イノベーションや開発が促進され、国全体の生産性が向上します。
- 格差の縮小: 金融知識の向上は、個人の生涯賃金や資産形成にプラスの影響を与えます。国全体の経済水準が底上げされることで、結果的に貧富の格差が縮小することがマクロ経済モデルのシミュレーションで証明されています。
- 不適切な債務の抑制: リテラシーが低い国では多重債務や金融詐欺が蔓延し、個人の自己破産が増加します。これが消費の冷え込みを招き、経済の足を引っ張ります。知識の普及は、こうした悪循環を防ぎます。
- 経済ショックへの耐性: 金融リテラシーの高い国民は「予備的貯蓄」を適切に確保しているため、大きな経済危機が発生しても、消費を極端に落とさずに維持できます。これが景気後退を防ぎ、長期的な成長率の安定につながります。
両学長は、「金融教育は個人を豊かにするだけでなく、国全体を強くするものである」と述べています。
2. 米国高配当株ETF「HDV」の毎月分配型移行:新NISAルールとの競合と投資家の判断
米国高配当株ファンドとして知られる「iシェアーズ・コア 米国高配当株 ETF(HDV)」の分配金支払い頻度が、従来の「四半期分配(年4回)」から「毎月分配(年12回)」へと変更される方針が発表されました(2026年6月18日配信情報)。
この変更を受け、楽天証券などの国内証券会社から「商品性の変更に伴い、顧客の資産を守る観点から、現在受けている注文を一度強制キャンセルする」という旨の通知が送られたため、投資家の間で混乱が生じました。「HDVは改悪されたのか」「売却すべきか」という懸念に対し、両学長は以下のように整理しています。
- 商品自体の健全性は維持されている: 一般的に日本の「毎月分配型投資信託」は、高コスト(購入時手数料や高い信託報酬)や、元本を取り崩して分配金を出す「タコ足分配」のリスクがあるため、投資を避けるべき「毒キノコ」と表現されます。しかし、HDVは上場投資信託(ETF)であり、仕組み上タコ足分配ができません。また、信託報酬も年率0.08%と超低コストのままであり、商品自体が劣化(毒キノコ化)したわけではありません。
- 新NISA口座での新規買付は不可に: 日本の新NISA(成長投資枠)制度では、信託期間やヘッジ目的以外のデリバティブ取引の制限に加え、「毎月分配型の投資信託およびETF」を対象外とする一律のルールが設けられています。今回の毎月分配型への移行により、HDVは新NISAの成長投資枠の対象から外れることになります。
すでにNISA口座で保有している分については、そのまま非課税で持ち続けられるケースが一般的であるため、慌てて売却する必要はありません。ただし、今後NISA口座で新たに高配当株投資を行いたい場合は、「VYM」など他の優良な高配当株ETFへの乗り換えを検討するのが合理的です。また、このような制度変更のニュースに直面するたびにパニックになる投資家に対しては、投資スタイルを極めてシンプルにし、全世界株式インデックスファンド(オルカン)1本に絞って「ほっとく」ことを強く推奨しています。
3. 税制から見る住宅戦略:個人賃貸が「ワースト」とされる理由と対策
住宅に関する永遠のテーマである「持ち家(所有)か賃貸か」という問いに対し、両学長は「感情論を排除し、経済合理性と税制(節税メリット)の観点のみで比較した場合、契約名義と所有形態の組み合わせによって大きな差が生じる」と指摘しています。動画内では、以下のマトリクスが提示されました。
- 個人名義×所有(持ち家): 住宅ローン控除(最大13年間、ローン残高の0.7%を税額控除)、3000万円の特別控除(居住用財産を売却した際の利益が3000万円まで非課税)、軽減税率、相続時の小規模宅地の特例(土地の評価額が最大80%減額)など、国策による極めて手厚い税制優遇が存在します。
- 法人名義×所有: 建物部分の減価償却費、維持管理費や固定資産税などの経費化、役員社宅としての活用による所得税・住民税の圧縮、本業の利益との相殺による法人税のコントロールなど、自由度の高い税金対策が可能です。
- 法人名義×賃貸: 支払う家賃を法人の経費(役員社宅制度の活用で家賃の最大約9割を経費化可能)とすることで、法人の利益を圧縮し、同時に個人の手取り額を最大化させることができます。両学長自身もこの「法人名義での賃貸」を選択していると明かしています。
- 個人名義×賃貸: 税制上のメリットは一切ありません。 家賃は全額自己負担(手取りからの支払い)であり、所得控除や経費化の恩恵を1円も受けられません。税制面から見ると、この形態が「ワースト戦略」となります。
個人名義で賃貸生活を送っている読者への対策として、副業や個人事業を起こして「個人事業主(または法人設立)」となり、自宅の一部を事務所として活用することで、家賃や光熱費の一部を事業経費として計上し、税負担を軽減するアプローチが提案されています。
4. 貯蓄率目安を「手取りの9割で暮らす」へ緩和した5つの合理的理由
これまでリベラルアーツ大学では、家計管理の強固な土台として「手取りの8割で暮らす(2割を貯蓄・投資に回す)」ことを推奨してきましたが、今回「手取りの9割で暮らす(1割を貯蓄・投資に回す)」へと方針を緩和・変更しました。その理由は以下の5点に集約されます。
- 日常生活の削りすぎ防止: 真面目な人ほど「2割貯蓄」のルールを厳守しようとするあまり、生活費を極限まで削り、日々の生活に強いストレスを感じたり、家族関係に不和が生じたりする弊害が見られたためです。
- 取り組むハードルを下げる: 家計管理の初心者にとって、最初から収入の2割を貯蓄に回すことは精神的・物理的なハードルが高すぎます。まずは「1割貯蓄」からスタートし、継続の成功体験を積んでもらうことを優先しました。
- 「使えない病」の克服: 資産形成が進み、目標(小金持ち山への登頂)を達成したにもかかわらず、お金を使うことに罪悪感を覚え、有効にお金を使えなくなってしまう人が散見されます。「未来の自分への仕送り(貯蓄)」が十分に済んだ人は、「今の自分」にお金を使い、人生の満足度を高めるべきです。
- 1割の貯蓄でも十分に機能する: ここで言う「手取り」には残業代やボーナス、臨時収入を含めていません。また、家具・家電の購入費や旅行代などの特別費は別途手取りから取り分けて管理することを前提としています。そのため、毎月の基本手取りから1割を貯蓄するだけでも、年単位で見れば実質的な貯蓄率は1割を大きく上回り、十分な資産形成が可能です。歴史的名著『バビロンの大富豪の教え』でも、「収入の1割を貯蓄せよ」と説かれています。
- 自己投資の枠を確保する: 貯蓄率を高めるために節約ばかりを優先すると、本やセミナー、資格取得などの「自己投資」に回すお金がなくなります。長期的には、自己投資によって自身の稼ぐ力を高め、収入そのものを増やす方が、資産形成のスピードは圧倒的に速くなります。
両学長は、「貯蓄率は個人の価値観やライフステージ、ライフプランに応じて柔軟に変更すべきものであり、一律の正解はない」と強調した上で、目安が欲しい人向けの公式アナウンスとして「手取りの9割で暮らす」を設定したと述べています。
5. ライフプランの3大資料と「キャッシュフロー表」が持つ重要性
「自分は手取りの何割を貯蓄すべきか」という問いに対する真の答えを得るためには、個人の「ライフプラン」を作成する以外に方法はありません。ライフプランとは、単なる「お気持ち表明」や願望のリストではなく、「人生の設計図をお金に落とし込んだもの」です。作成することで、「将来への漠然とした不安が解消される」「罪悪感なくお金が使えるようになる」「計画を見直すたびに人生が上方修正される」という極めて大きなメリットがあります。
ライフプランを作成するにあたり、必要となる3つの重要資料は以下の通りです。
- 収支表&バランスシート: 毎月の家計簿(収入と支出の流れ)と、現在の資産・負債の状況を一覧にしたものです。家計の「現在地」を正確に把握するために用います(マネーフォワード MEなどのツールで代用可能)。
- ライフイベント表: 将来、何歳のときに、どのようなライフイベント(結婚、出産、子どもの進学、住宅や車の購入、リタイアなど)が発生し、それぞれにいくらの費用がかかるかを時系列で整理した表です。
- キャッシュフロー表: 収支表とライフイベント表を統合し、将来にわたる毎年の収支推移と貯蓄残高の増減をシミュレーションした表です。未来の昇給見込みや物価上昇率なども加味して作成します。
特に「キャッシュフロー表」はライフプランの心臓部であり、これを作成することで「お金を貯めるべき時期」と「お金を使うべき時期」が明確に視覚化されます。キャッシュフロー表の作成が煩雑に感じる場合は、リベシティが提供する「ライフプラン作成ツール」等を活用して、まずはライフイベント表(ステップ3)まで作成することを推奨しています。
6. 2027年開始予定「こどもNISA」の概要と活用すべき5つの人物像
2027年1月から、未成年者を対象とした新しい非課税投資制度「こどもNISA」が開始される予定です(2026年7月時点の情報。編集部注:制度の詳細は今後変更される可能性があります)。これは過去に存在した「ジュニアNISA」とは完全に異なる新しい制度であり、自動的に移行されるものではありません。制度の主な概要は以下の通りです。
- 対象年齢: 0歳から17歳(未成年者限定)
- 年間投資枠: 60万円
- 非課税保有期間: 無期限(18歳に達した時点で、成人のNISA口座のつみたて投資枠へと自動的にロールオーバーされる仕組み)
- 生涯非課税限度額: 600万円(元本ベース。年間60万円の満額投資を行った場合、10年で上限に達する)
- 引き出し制限: 12歳以上であること、用途が子どもの教育費等であること、子どもの同意があること、金融機関への必要書類提出など、一定の制限が設けられています。
両学長は、制度自体は経済的に非常に有利であると認めつつも、自身の教育観として「親が先回りして子どもに多額の資金を贈与しすぎると、子どものハングリー精神や自立心を奪い、結果的に子どもを弱くしてしまうリスクがある」と指摘しています。その上で、こどもNISAを有効に活用すべき人物像として、以下の5つのパターンを挙げています。
- 子どもに身体的・精神的なハンデがある家庭: 将来の自立に備え、親が可能な限りの経済的支援を用意しておく必要があるケースです。
- 子どもへの実体験を伴う金融教育を目的とする場合: 投資の仕組みや複利の効果を、子ども自身が身近に学ぶ教材として少額で運用するケースです。この場合、多額の資金を投じる必要はありません。
- 進学資金を完全に分離して管理したい家庭: 親自身の生活資金や他の貯蓄と混ざると使ってしまうため、制度の引き出し制限を逆手に取り、子どもの教育資金として強制的に隔離・管理したいケースです。
- 子どもに少しでも有利なスタートを切らせたいと考える家庭: 親が資金を贈与することの教育的デメリットよりも、非課税運用のメリット(18歳時点でNISA枠が一部埋まった状態で社会に出られる)を重視するケースです。
- 夫婦のNISA枠(計3600万円)をすでに使い切った富裕層家庭: これ以上の非課税枠が国内にないため、子どもの名義を借りて非課税運用の枠を拡張したいケースです。ただし、一度こどもNISAに入れた資金は子どもの財産となり、親の都合で引き出して使うことは困難になる点に留意が必要です。
7. 実家が「負動産」化するリスク:金利上昇とコスト高騰に備える売却戦略
日本の不動産市場は、価値が維持・上昇する「ごく一部の超人気エリア」と、価値が下がり続ける「大部分の不人気エリア」への二極化が急速に進んでいます。両学長は、自身の友人が親と協力して、30年以上暮らした実家マンションの早期売却に踏み切った事例を紹介し、金利上昇とコスト高騰が続く現在のマクロ環境において、実家を放置して「負動産(維持費ばかりかかり、売ることも貸すこともできない負債となる不動産)」にしてしまう前に、早期に手を打つ(売却する)ことの重要性を説いています。売却を後押しする主な環境要因は以下の3点です。
- 金利の上昇トレンド: 日本国債10年の金利は、過去5年間で0%付近から2.5%付近(動画内8/9時点で約2.8%)へと急上昇しています。これに伴い、住宅ローン金利(変動・固定ともに)も上昇傾向にあります。金利が上昇すると、住宅購入希望者の毎月の返済負担が増えるため、マイホームを買える人が減り、結果として不動産価格の下落圧力となります。金利がまだ比較的低い「今」のうちに売却する方が、高く売れる可能性が高くなります。
- 建設費・リフォーム費用の高騰: 2015年の建築費を100とした場合の建設物価指数(RC造集合住宅)は、2026年現在、約150(1.5倍)まで上昇しています。これにより、実家の修繕リフォーム工事を行う際の費用が劇的に高騰しています。また、マンションの場合は共用部の維持管理コストも跳ね上がるため、将来的に「修繕積立金」が大幅に値上げされ、所有者の家計を圧迫するリスクが極めて高くなっています。
- 実家を相続したくない現役世代: 30代〜50代の現役世代への調査では、将来実家を「相続したくない」と答える割合が43%に達しています。立地が悪く、老朽化した実家を引き継いでも、管理の手間や固定資産税の負担だけが残り、遺族にとって重荷になるためです。
両学長は、「価値が上がる見込みのない実家を、ただ『愛着があるから』『動くのが面倒だから』という理由で持ち続けるのは、時限爆弾を抱えているようなものである」と警告しています。合理的な選択肢として、実家を早期に売却して現金化し、その売却資金を全世界株式(オルカン)や優良な債券などで手堅く運用しながら、親はバリアフリーの賃貸住宅などに住み替える戦略を提示しています。
例えば、実家が3000万円で売却でき、それを年利4%で運用できれば、年間120万円(月額10万円)の分配金・利息が得られます。これに親の年金を合わせれば、賃貸の家賃や生活費を十分に賄うことができ、住居の維持管理にかかる突発的な修繕費用や固定資産税の支払いからも完全に解放されます。
不動産業界は玉石混交であり、悪質な業者に買い叩かれないためには、複数の会社に見積もりを依頼して比較することが不可欠です。信頼できるツテがない場合は、「イエウール」などの一括査定サイトを利用して、まずは実家の「現在の市場価値」を把握することが、負動産化を防ぐ第一歩となります。




