概要
ニッセイ基礎研究所はレポートを公表しました。2025年の年金関連法改正が行われた後も残る課題についてです。それは遺族年金と老齢年金の課税上の不均衡です。老齢年金は課税対象となっています。一方、遺族年金は非課税とされています。この扱いの違いは医療や介護の自己負担額の判定にも影響を及ぼしています。制度の公平性をめぐる課題が指摘されました。今後の見直しの必要性についても触れられています。
何が発表された?
ニッセイ基礎研究所は2026年10月30日付でレポートを公開しました。タイトルは「法改正後も残る遺族年金と老齢年金の課税上の不均衡-高齢期の医療・介護の自己負担にも及ぶ影響」です。2025年の年金関連法改正により大きな変更があります。遺族厚生年金は2028年度から段階的に有期化されます。従来の「生活保障」から死別後の「生活再建」へと方向転換することになっています。しかし同研究所は別の問題点を挙げています。この大きな制度改革を経てもなお公租公課に関する扱いの違いが残るためです。税金や社会保険料の扱いにおける老齢年金と遺族年金の差です。これが高齢期の生活水準の公平性を損なう要因になっていると同研究所は分析しています。
中身をくわしく見ると?
なぜ老齢年金と遺族年金で税金の扱いが違うのか
日本の社会保障給付は原則として公租公課が禁止されています。しかし老齢基礎年金や老齢厚生年金は例外です。これらは「雑所得」として課税対象とされています。これにはいくつかの理由があります。老齢への備えとして保険料納付実績に比例した給付であることです。さらに貯蓄的・給与後払い的な性格があることも総合的に勘案されています。一方、遺族年金や障害年金は扱いが異なります。これらは予期できないリスクへの対応であるためです。保険料との連関性が高くないことなども理由とされています。そのため所得税法上で非課税所得とされています。
非課税であることが医療や介護の自己負担にどう影響するか
遺族年金が非課税であると手取りの減少が抑えられます。それだけでなく別の影響もあります。国民健康保険や後期高齢者医療保険、介護保険などの自己負担割合を決定する所得判定にも原則として含まれません。例えば介護保険の自己負担割合を決める場面を想定します。老齢年金のみで一定額を受けている人がいるとします。一方で老齢年金と遺族年金を合わせて同額を受けている人もいます。後者の方が所得判定に含まれません。そのため自己負担が低く抑えられる場合があるのです。これにより問題が生じます。受給する年金の種類によって利用できるサービスの量に差が生じるおそれがあります。生活の質にも差が出る可能性があります。
遺族厚生年金受給者の実際の年金収入分布
厚生労働省の「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度)」にデータがあります。それによると遺族年金の受給権者は計約620万人です。平均受給月額は8.2万円となっています。また2024年度に遺族厚生年金を受給した妻を対象としたデータもあります。対象者は約552万人です。他の年金を合わせた公的年金の合計月額の平均は13.7万円となっています。さらに別のデータもあります。遺族厚生年金を受給する妻のうち約1割の約50万人が該当します。自身の老齢年金などを合わせると月20万円以上の公的年金を受給しています。つまり全員が低所得者というわけではないのです。
数字で見ると?
| 項目 |
数値 |
出典 |
| 遺族年金の受給権者数 |
計約620万人 |
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度)」 |
| 遺族年金の平均受給月額 |
8.2万円 |
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度)」 |
| 遺族厚生年金を受給する妻の総数 |
約552万人 |
ニッセイ基礎研究所レポート(2024年度データ) |
| 公的年金の合計月額が20万円以上の妻の割合 |
約1割(約50万人) |
ニッセイ基礎研究所レポート |
| 遺族厚生年金の月額階級別最多分布(単体) |
8〜9万円 |
厚生労働省「厚生年金保険・国民年金事業年報(令和6年度)」 |
なぜ今?業界への影響は?
2025年の年金関連法改正が行われました。これにより遺族厚生年金制度は大きく変わります。これまでの終身制から原則5年間の有期給付へと大きく舵を切りました。これに伴い国は配慮措置を講じています。有期給付期間中の加算制度の新設などを行っています。婚姻期間中の年金記録を分割する「死亡時分割」なども導入されました。しかし編集部注記があります。多くの受給者が60歳以上で死別しているためです。そのため改正後も非課税の遺族年金を終身で受け取るケースが多いと見られています。高齢単身世帯の増加が進んでいます。医療・介護給付費の増大も進んでいます。このような状況のなかで問題が指摘されています。実際の負担能力を反映しない非課税措置が存続することへの懸念です。これが世代内の公平性を歪める可能性があるとされています。そのため専門家から課税化を求める声が上がっています。
自分に関係ある?
この問題は特定の層に深く関係します。配偶者と死別した経験のある人が対象です。また将来的に遺族年金を受け取る可能性がある現役世代やシニア層にも関係します。仮に将来の制度変更があったとします。高齢期の遺族年金が課税対象に見直された場合の想定です。その場合でも配慮措置が想定されます。寡婦控除などの税制優遇措置があるためです。そのため受給額が低い妻は引き続き非課税のままで済むケースが多いと考えられます。一方で別の影響を受ける人もいます。一定以上の年金収入がある受給者にとっては話が別です。税負担や医療・介護の自己負担判定が変わる可能性があります。そのため今後の制度論議に注目しておく必要があります。
もう使える?取引できる?
- 本記事で紹介した内容はレポートに基づくものです。ニッセイ基礎研究所が公表した調査・分析レポートとなっています。特定の製品やサービスのように直接申し込むものではありません。
- 読者が次にできることがあります。ニッセイ基礎研究所の公式ホームページにアクセスする方法です。該当のレポートや関連するバックナンバーを確認することが挙げられます。
- また自身の状況を確認することも重要です。自身の老齢年金や遺族年金の受給見込み額を調べることが推奨されます。関連する税制優遇措置についても確認が必要です。厚生労働省のホームページや年金事務所などの公式情報を確認することが推奨されます。
まとめ
遺族年金制度の大規模な見直しが進んでいます。一方で別の課題も残されています。老齢年金との間の課税上の不均衡です。それに伴う医療・介護の自己負担の差といった課題も残されています。読者としてのスタンスが大切です。今後の年金や税制に関する公的発表に注意を払う必要があります。自身の老後の収入や負担計画について確認することも重要です。最新の正しい情報を把握しておくことが大切です。