対象は、OpenAIが今後保有し運営する米国のデータセンター(計算施設)の周辺地域です。すでにある施設や、他社が運営する施設の約束ではありません。日本の利用者がChatGPTなどを使うときの料金や条件が、今回の発表で変わることはありません。
今回の「National Community Compact(全国地域協定)」は、施設を受け入れる地域に対して、OpenAIが何を約束するかをまとめたものです。あわせて「Compute Campus Policy Blueprint(計算施設の政策提言)」も出しました。こちらは、国や州、自治体に向けたルール作りの提案です。
OpenAIの公式ブログによると、今回の発表は1月に示した「Stargate Community」の約束の延長にあたります。ジョージア州とオハイオ州では、すでに個別の約束も出していました。
施設ごとに協定を結び、共通の3つを約束
OpenAIが保有・運営する今後のすべての施設で、その地域専用の協定を結びます。計画づくりの早い段階から住民の意見を聞き、施設が動いている間は地元の連絡窓口を置き、毎年の取り組みを公開します。
共通の約束は3つあります。
1つ目は、エネルギーとインフラの費用を自社で払うことです。使う電気の全額と、そのために必要な設備の費用を負担します。大きな支出が始まる前に資金面の保証を示し、事業が遅れたり縮小したり中止になったりしても、ほかの電力の利用者が守られるようにします。
2つ目は、地域の資源を守り、影響を公開することです。施設ごとに水の計画をつくり、水を循環させる方式か、水の使用が少ない冷却方式を優先します。水と電力の使用量は、施設単位で公表します。建設計画と、第三者による騒音調査も、稼働前と稼働後に毎年公開します。
公職者に秘密保持契約(NDA)も求めません。例外は、正当な安全情報や営業秘密などに限った狭い範囲です。
3つ目は、地元の労働者と企業に機会をつくることです。見込む雇用数を公表し、労働組合や訓練機関と組んで住民の準備を支えます。採用と見習い制度の状況は、毎年報告します。住民が選んだ優先課題への継続的な投資も行います。
給食と育児支援に、480万ドルと600万ドル
優先課題は地域ごとに違います。ジョージア州エフィンガム郡では、住民の意見を受けて480万ドルの助成が決まりました。郡内の児童・生徒1万4,000人全員が、無料で学校給食を受けられるようにする内容です。約7億6,000万円の目安です(サイソク編集部の計算)。
オハイオ州パイク郡では、家庭が育児支援を優先課題に挙げました。これを受け、OpenAIとSB Energyが共同で600万ドルを出します。約9億5,000万円の目安です(サイソク編集部の計算)。円換算は1ドル=158.25円で計算しています(ECB参照レート、11/4確認)。
電力不足のとき、供給を減らせる合意
政策提言の柱の1つは、電気代を誰が負担するかです。州の公益事業委員会に対し、大口の電力利用者が送電網に加える費用を負担し、事業が頓挫した場合にもほかの利用者を守るよう求めています。電力不足のときに安全に需要を減らせる施設は、接続を認めやすくすることも提案しました。
具体例として挙げたのが、エフィンガム郡の計画中の施設です。電力会社Georgia Powerとの合意で、需要が高い時期には、電力会社が供給を最大1,000メガワット減らせます。
公式の資料によると、OpenAIは設備費用を全額負担する合意にも署名しています。この合意は、Georgia Powerの消費者負担を抑える計画の一部とされています(OpenAI公式「Stargate Policy Blueprint」、11/5確認)。
連邦議会には、送電網の増強を早めることと、クリーン電力への税優遇を復活・拡大することを求めています。
公開と地元調達を、ルールとして求める
提言は、水・電力・騒音・雇用の公開を義務づけることも求めています。公職者への秘密保持契約は、使える場面を狭く限る案です。州や自治体が税優遇を出す場合は、条件を公開し、達成目標を数字で示し、守られなければ恩恵を取り戻せる仕組みを求めています。
地元の仕事を増やす方法も示しました。事業者が購買計画を早めに共有すれば、地元の供給業者が契約を競えます。採用の見通しを使えば、企業や建設系の労働組合、コミュニティカレッジが、確実に生まれる仕事に向けて住民を訓練できます。建設中の電気工事から、稼働後の電力・冷却設備の保守まで幅広く見込んでいます。
OpenAIはこの発表を、AIの恩恵が広く共有されるかを測る最初の試金石の1つと位置づけています。