画像を分類するAIを自分たちで作る人や、写真の判定を仕事にしている人に関係する研究です。ふつうの会社員の仕事が、すぐ変わるわけではありません。Google Researchの公式ブログによると、Agile Deliberation(アジャイル・デリベレーション)は、画像を分類するAI(分類器)を、人とAIが対話しながら作る仕組みです。
従来は、人が決めた正解の付いた画像を大量に集めて、AIに学ばせてきました。しかし、人の頭の中にある基準は、最初から固まっているとは限りません。

分類の基準を2段階で決める
「健康的な食事」は、人によって中身が変わる言葉です。研究では、こうした曖昧な基準を2つの段階で決めていきます。
1段階目は「概念の切り分け(concept scoping)」です。大きな言葉を、含めるものと除くものに分けて、基準の枠組みを作ります。たとえば「健康的な食事」の中に「サラダ」「穀物を使ったボウル料理(グレインボウル)」「赤身のたんぱく源」を入れます。一方で「加工食品」や「下ごしらえしていない生の食材」は除きます。
2段階目は「概念の反復(concept iteration)」です。ここでAIは、判断が割れそうな画像を選んで見せます。画像と文字を一緒に理解するAI(視覚言語モデル、VLM)が、「該当する」とも「しない」とも言い切れない画像を探します。
たとえば、フルーツのスムージーの画像が出てきたとします。生の果物が入っているので健康的な飲み物なのか。それとも砂糖が多いので、除くべき加工食品なのか。利用者はここで判断を迫られます。
判断を重ねると、利用者自身も気づいていなかった前提が見えてきます。その判断は、AIへの指示文(プロンプト)を自動で直す仕組みに送られます。分類の境目が、利用者の決めた基準に合わせて動いていく流れです。
研究チームは、実際の人を相手にライブ調査で評価しました。参加者は18人で、1回1.5時間のセッションを行いました。参加者は、この仕組みと比較対象の方法を、順番をランダムにして試しています。比較対象は次の3つです。
- ゼロショット分類器(指示文を一度書いたら終わりの方法)
- モデリング協力者(自分で手順を進めるAIが基準を自動で分解する方法。利用者は途中で口を挟めない)
- 手作業の検討(表計算ソフトで画像を見て、指示文を手で書き直す方法)
結果は、構造化された検討をした人ほど、時間がたっても判定がぶれにくかったというものです。比較対象の方法よりも、高い性能の分類器を作れました。特に差が大きかったのは、判定の難しい画像でした。
研究では、疲れや不安の面でも差が出ました。手作業で指示文を直すと、直したところ以外の判定が悪くなるのではないかという不安が生まれます。Agile Deliberationでは、この負担が統計的に有意に(偶然とは考えにくい差で)減ったと報告されています。
編集部の見立てでは、この評価は2つの分野と18人という小さな規模です。一般の業務でも同じ効果が出るかは、まだ確かめられていません。

使い方と日本での提供状況
コードとアルゴリズムはGitHubで公開されています。研究者が仕組みを確かめたり、自分の分野に応用したりできます。試してみるなら、Colab/Jupyter(ブラウザで動くプログラムの実行環境)のデモが用意されています。デモでは、「健康的な食事」の例を最初から最後まで追えます。公式ブログは、このデモを自分の分野にも使えるとしています。例として、ゲームや動画で、お金やデジタルの報酬を誇張する誤解を招く画像(クリックベイト)を見分けることや、芸術作品を集めることが挙げられています。日本での提供や、一般向けサービスとしての提供時期は、まだ発表されていません。







