Google DeepMindがGemini Robotics 2を公開、多指ハンドとグリッパーの物理的器用さを自律制御
Google DeepMindは2026年7月30日、ロボットの物理的な器用さを飛躍的に向上させる新しいAIモデル「Gemini Robotics 2」を公開しました。本モデルは、5本指の多指ハンドから産業用平行グリッパーまで異なるエンドエフェクターに対応し、電球の取り外しやゴミ袋の結束といった複雑なタスクを、等倍速かつ完全自律で実行可能です。
2つ目のデモは、非常に柔軟で形状が定まらないビニール製のチャック付き袋(Ziploc)に、潰れやすい「ぶどう」の房を収納し、さらに袋のチャックを閉めるという極めて難易度の高いタスクです。ロボットは左手で袋の口を開け、右手でぶどうの房を優しくつかんで袋の中に投入します。その後、袋の端を指先でつまみ、もう一方の手の指先をスライドさせてチャックを正確に密閉しました。リサーチサイエンティストのMaria Bauza氏は「これには多くの精度だけでなく、高度な調整能力が必要です(This requires a lot of precision but also a lot of coordination)」と説明しています。柔らかい袋と、潰れやすい果物という、物理的なモデル化が極めて困難な対象(変形可能オブジェクト)を、多指ハンドの触覚と視覚のフィードバックによって破綻なく処理している点が、既存のロボット技術との決定的な差分です。
電球の取り外し(Unscrewing the Bulb)
3つ目のデモでは、デスクランプに取り付けられた電球をソケットから回して取り外す作業が行われました。研究者が「アポロ、電球を外してくれますか?(Hey Apollo, can you unscrew the bulb?)」と音声で指示すると、ロボットはランプシェードの狭い隙間に多指ハンドを挿入し、電球を指先で包み込むようにつかんで反時計回りに回し始めます。Maria Bauza氏は、電球が球体の中に隠れているため、指先との接触点を極めて正確に制御する必要があると指摘します。電球を取り外すには、「ひねる、押す、引く(twist, push, pull)」といった複数の複雑な動作を組み合わせ、かつガラスを割らないように適切なトルクを維持しなければなりません。ロボットはこれらの動作を自律的に理解し、電球を破損させることなくスムーズに取り外すことに成功しました。
工具箱の整理とツールの再配置(Tool Kit Reorientation)
4つ目のデモでは、5本指ハンドではなく、産業現場で一般的な2本指の平行グリッパー(Robotiq製)を用いたタスクが紹介されました。作業台の上には、ドライバーのビット、ハンマー、レンチなどの工具が収納される専用のプラスチックケースが置かれています。ロボットは、ケースや工具の位置が乱雑に動かされた状態からスタートします。シニアスタッフ・リサーチサイエンティストのKonstantinos Bousmalis氏は「平行グリッパーであっても、器用さ、精度、そして3次元空間の理解が必要です(We need to have dexterity, precision, and 3D space understanding)」と語ります。ロボットは、工具が逆向きに置かれていても、それを空間内でどのように回転させて持ち替えるべきかを自律的に判断(リオリエンテーション)し、ケースの凹凸に寸分の狂いもなく正確にハメ込んでいきました。これは製造業や物流倉庫におけるピッキング作業の自律化に直結する技術です。
ゴミ袋の結束(Tying a Knot on Trash Bag)
最後のデモは、Gemini Robotics 2の器用さを象徴する、ゴミ袋の紐を結ぶタスクです。ロボットは、ゴミ袋の口から伸びる2本の青いビニール紐を両手の指先で器用につまみ、交差させ、輪の中に片方の紐を通して引き締めるという「結び目を作る(Tying a knot)」動作を自律的に実行しました。Marissa Giustina氏は「多指ハンドは、このような複雑な結び目作成の器用さを実現するための重要な要素です(Multi-fingered hands are a key ingredient for this kind of intricate knot-tying dexterity)」と述べています。紐のように極めて柔軟で、自己閉塞(自分の手で対象が見えなくなること)が発生しやすい物体を、指先の器用な連携だけで結び上げる技術は、ロボティクスにおける最難関タスクの一つとされてきました。
Google DeepMindが公開した「Gemini Robotics 2」は、ロボットの手先の器用さを自律制御によって極限まで高めることに成功しました。読者が取るべき次のアクションは、自社の業務プロセス(製造、梱包、清掃など)において「手先の器用さ」がボトルネックとなって自動化を諦めていた箇所を再洗い出しし、ロボット基盤モデルの適用可能性を評価し始めることです。