今回の実証の利用者は、NTT東日本関東病院の医療従事者です。ほかの医療機関へ広がる時期は、まだ発表されていません。
医療AI情報プラットフォームは、医療の情報をAIで調べるための仕組みです。医学書院、NTT、NTTドコモビジネスが2026年4月から共同で開発してきました。今回はそれを病院の現場で試す段階に入ります。
電子カルテ端末から、医学・医療情報を引き出す
医療現場で生成AIを使うには、患者情報を適切に扱うことと、利用と運用を管理することが欠かせません。AIがもっともらしい誤りを答えるハルシネーション(事実と違う回答)による誤診のリスクも、対策が求められています。
一般のAIは、学習した内容をもとに答えるため、どこから得た情報か分かりにくいことがあります。(編集部注)今回の仕組みは、答えの前に医学書院の資料を探す形をとります。
NTTの発表によると、仕組みは次のように動きます。医療従事者が「ユビー生成AI」に質問すると、医療AI情報プラットフォームが医学書院の医学・医療情報を検索します。検索には検索拡張生成(RAG、AIが外部の資料を探してから答える仕組み)を使います。
回答と一緒に、根拠となる情報と出典が示されます。医療従事者は答えを読んだあとに、出典を開いて確かめられます。
医学書院の情報は、第一線の著者が書き、長年の編集ノウハウで作ったものです。科学的根拠に基づき、著作権も適切に処理されています。
医療従事者は電子カルテ端末から直接質問できます。院外のサービスに切り替えずに、必要な医療情報を確認できる形です。
役割は分担されています。医学書院は医学・医療情報を提供します。NTTは医療制度や現場の実態を踏まえ、研究開発の知見を生かします。NTTドコモビジネスは、プラットフォームの構築・運用と、ユビー生成AIとのAPI連携(アプリ同士をつなぐ仕組み)を担当します。Ubieは、医療従事者が使う画面と操作の設計、評価と改善を受け持ちます。
日本の医療機関で、まず1施設から検証
実証の場は、東京都品川区のNTT東日本関東病院です。実際の診療業務で使い、次の5つを検証します。
- 医学・医療情報の検索・確認に要する時間の短縮
- 回答内容と根拠情報の有用性・信頼性
- 診療業務で使うときの操作性・利便性
- 医療現場への導入・運用に必要な機能と条件
- 医療AIの社会実装に向けた制度・運用上の課題
時間が本当に短くなるかは、実際の業務で確かめる段階です。短くなった度合いは、実証の結果を待つことになります。
編集部の見方では、この仕組みの要は、答えの根拠を医療従事者が自分で確かめられる点です。AIの答えをそのまま信じず、出典で確かめる使い方が、医療の現場では欠かせないからです。
今回の取り組みは、医療従事者が生成AIを安心して活用できる環境づくりをめざすものです。医療従事者や患者が、信頼性の高い医療情報を必要なときに使えることを目標にしています。
実証で得た知見をもとに、機能と運用を高めます。そのうえで、他の医療機関や医療AIサービスへの展開を進めるとしています。
医療機関ごとに、システム環境やセキュリティの条件は違います。そこで、クラウド、閉域ネットワーク(外部とつながらない専用の回線)、オンプレミス(病院の自前の設備で動かす形)など、利用環境に合わせた提供形態を図るとしています。
将来は、電子カルテや医療機関向けサービスとの連携も視野に入れています。NTTの大規模言語モデル「tsuzumi」を含むAI基盤モデルの活用も進め、特に高い信頼性が求められる環境に対応する考えです。医療の質・安全性の向上と、医療従事者の負担軽減への貢献をめざすとしています。







