今すぐ、スマートウォッチの画面に高血圧の判定が出るわけではありません。今回の研究は、普段どおり身につけたスマートウォッチのデータだけで、高血圧の兆候を見つけられるかを調べたものです。
高血圧は、ほとんど症状が出ないため「静かな殺し屋」と呼ばれています。世界で10億人を超える人が抱えていますが、半分以上は自分が高血圧だと気づいていません。特に18〜44歳の若い世代は見つかりにくく、治療が遅れる原因になっています。
血圧の計測は、これまで健康診断や診療所での測定が中心でした。腕帯を使わない血圧計(カフレス型)は、腕に巻く血圧計(腕帯式)による定期的な校正が必要です。そのため、血圧の変化は追えても、高血圧かどうかを単独で判定するのは難しいとされています。今回の研究は、この校正をなくして判定することを目指した点が違います。
画像:Google Research(公式発表)手首のセンサーで、どう高血圧を見分けるか
今回の仕組みは、2つのセンサーを使います。光センサー(PPG)は、手首の血液の量の変化を、反射した光で読み取ります。加速度センサー(ACC)は、体の動きを測るほか、心臓が血液を送り出すときに手首に伝わる細かな振動、心弾動図(BCG)も捉えます。
研究チームは、AIを2段階で学習させました。最初の段階では、正解のラベルがないデータから、脈と動きの波形の特徴を覚えさせました。使ったのは2,109人分、計492,347時間のセンサーデータです。
次の段階では、15秒ごとの特徴を数日間にわたって平均します。急な動きや体温の変化といった一時的なノイズを薄めるためです。そこに身長を加え、高血圧の確率を出します。身長は、動脈の長さの目安として使われています。
AIが何を手がかりにしているかも示されています。高血圧の確率が高い人の脈の波形は、幅がわずかに狭く、血液が出ていく立ち上がりがゆるやかでした。研究チームは、動脈が固くなり、広がりにくくなっている可能性を示すとしています。
画像:Google Research(公式発表)初回検査は感度65.8%、確認検査は特異度90.9%
研究は、米国の5施設で196人を対象に行われました。対象は、心血管の病気がなく、血圧の薬を飲んでいない人です。比べる基準には、24時間血圧測定(ABPM)を使いました。1日中、血圧を測り続ける方法で、高血圧の診断の基準とされています。
初回の検査(スクリーニング)の結果は、次のとおりです。感度は高血圧の人を見つけられた割合、特異度は高血圧でない人を正しく外せた割合、陽性的中率は陽性と出た人が本当に高血圧だった割合です。
- スマートウォッチ:感度65.8%、特異度90.0%、陽性的中率80.6%
- 診療所での血圧測定:感度55.3%、陽性的中率77.8%
確認検査は別の場面です。診療所で血圧が高いと出た人は、日を変えて測り直すよう勧められています。研究では、その条件に当たる48人を取り出して調べました。
- スマートウォッチ:感度78.4%、特異度90.9%、陽性的中率96.7%
- 再測定の診療所血圧:感度67.6%、特異度63.6%、陽性的中率86.2%
- 数日間の家庭での血圧測定:感度89.2%、特異度81.8%、陽性的中率94.3%
スマートウォッチは、再測定の診療所血圧を上回り、数日間の家庭での測定に近い数字でした。
編集部の見方では、確認検査の対象は48人と少ないため、数字はまだ確定的ではありません。より多くの人で同じ結果が出るかが、今後の検証の焦点になります。
研究チームは、この仕組みが腕帯式の血圧計の代わりにはならず、単独で確定診断もできないとしています。見つかった人を、正式な検査へ促すために使うことを想定しています。
研究の成果は、Googleの健康アプリ「Google Health」の血圧の傾向機能(Health Guardian)の作成にも役立ったと説明されています。ただし、同じ発表は、この手法が今の製品や今後の製品の機能を示すものではないとも書いています。