NVIDIAの公式ブログによると、AI AerialとSionnaは、研究者が6Gの技術を試すための無料のオープンソースソフトです。誰でもGitHubから入手できます。日本の利用者に向けた個別の条件は、まだ発表されていません。
Aerialは基地局など無線通信の実機側のソフトです。Sionnaは通信をコンピューター上で再現して、AIの学習や検証に使うツールです。NVIDIAによると、両者を組み合わせると、シミュレーションとAIの学習、実際の電波を使う実験を一つの流れでつなげられます。Aerialは1年前にオープンソース化されました。
100万ダウンロードと開発者10倍の中身
NVIDIAによると、この1年でAI AerialとSionnaの開発者の利用は10倍になりました。5G/6G向けツール全体のダウンロードは100万を超え、8,000を超える研究・学術機関が使っています。
公式ブログは、AIを組み込んだ6Gを「通信、計算、センシングを、ソフトで動かす一つの基盤で提供するネットワーク」と位置づけています。以下の4つは、その方向性を示す研究事例です。
ロボットの作業時間が最大52.6%短縮
ロボットがAIの判断を近くのサーバーやクラウドに頼る場合、無線通信の時間が応答の遅れに直結します。
研究者は、画像をそのまま送らず、物の特徴と位置、関係だけを送る「ゴール志向のセマンティック通信」を試しています。必要な情報だけを送るので、倉庫や職場のように状況が変わる場所で素早く動けるとされています。
ロンドン大学キングス・カレッジは、カメラ付きのロボットアームを、Sionnaが動くJetson AGX Orin(NVIDIAの組み込み向けAIコンピューター)につなぎました。果物の箱詰めと立方体の積み上げで、わざと不具合を起こして検証しています。
その結果、定期的に画像を送る方式より、作業の完了時間が最大52.6%短くなり、成功率も上がりました。物を落とした検知や、失敗からの回復もできました。デジタルツイン(現実を模した仮想モデル)を使う構成では、動かす前に衝突の可能性も確認できました。
AIの受信機で上りの通信速度が最大約60%向上
消防士がドローンの映像を受けるときなど、電波の干渉で信号が読み取りにくいと、誤りと再送で情報が遅れます。AIの受信機は、届いた信号から情報をより正確に取り出すよう学習したものです。
ソフトバンクは、ニューラル受信機をAerial CUDA-Accelerated RAN(ACAR)に組み込み、市販の5Gスマートフォンで試しました。干渉のある条件で、従来の受信機より上りのスループット(処理量)が、試した15の設定すべてで高くなりました。最大の向上幅は約60%です。
スイスのETHチューリッヒは、Aerial Testbedを使い、現地の測定値で受信機を調整しました。選んだ事前学習版と比べ、ブロック誤り率が3分の1以上下がっています。
基地局を休ませて消費電力45.6%減
6Gでは接続する機器とAI利用が増え、電力の管理が課題になります。たとえばスタジアムでは、観客が帰ると必要な通信容量が減ります。
英リーズ大学は、10分先の通信量を予測し、基地局を休ませる判断に使う仕組みを開発しました。休ませる前に、近くの稼働中の基地局が対象の機器を引き続き受け持てるかを確認します。需要が戻れば容量を復帰させます。
持ち運べる5Gの「ネットワーク・イン・ア・ボックス」(DGX Sparkで動作)とデジタルツインで検証した結果、フル稼働の基準よりRAN(基地局側の無線設備)の消費電力が45.6%減りました。機器の接続も保たれたと研究者は報告しています。
3時間のシミュレーションが10〜20分に
何百台もの機器が接続を競う状況や電波の干渉は、設備を作る前に試す必要があります。ただし、現実的なシミュレーションは数時間かかり、試せる案が限られます。
スペインのカタルーニャ通信技術センター(CTTC)は、GPUで高速化した電波の伝わり方のモデルを、ACAR上で動かし、オープンソースの5G-LENAシミュレーターに組み込みました。早期の評価では、実行時間が約3時間から10〜20分になりました。組み込み方で差があります。統計的な挙動と通信性能は保たれています。